2018 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms involved in regulation of osteoclastogenesis by glucan through autophagy
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18K09797
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
有吉 渉 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40405551)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 炎症性骨破壊 / β-glucan / dectin-1 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖β-glucanの1つcurdlanが、破骨細胞前駆細胞に特異的に発現しているパターン認識受容体dectin-1に作用して、破骨細胞分化や骨吸収活性を抑制することを見出した。さらに、その抑制メカニズムとして、非受容体型チロシンキナーゼであるspleentyrosine kinase (syk)のタンパク発現抑制が関与していることを証明した。興味深いことに、この負の制御は、遺伝子レベルの発現抑制を介さず、細胞質タンパクの代謝に中心的な役割を果たすオートファジーによるタンパク分解機構が関与することが示唆された。そこで今回、β-glucanとdectin-1との相互作用の結果、誘導されるオートファジーによる破骨細胞の分化抑制メカニズムの全容を明らかにすることを目的として詳細な解析を展開する。そこで得られた知見をもとに、未だ不明な点が多い自然免疫系による骨代謝制御機構を明らかにするとともに、破骨細胞に選択的な治療効果を示す創薬の開発を目指す。 破骨細胞前駆細胞RAW264.7のdectn-1過剰発現株を樹立し、curdlanを添加して培養を行ったところ、dectin-1とともにsykタンパクの発現が著明に減少した。この減少は、bafilomycin A1の前処理により回復することから、curdlanによるdectin-1、sykタンパクの分解が、オートファジー・リソソーム系に依存している可能性が示唆された。このことは、curdlan添加により、オートリソソームの形成が亢進すること、そして、オートファゴソーム・オートリソソームのマーカーであるLC3-Ⅱの形成が誘導されることからも支持された。さらに、オートファゴソームによるバルク分解系の誘導に、phoshatidylinositol 3-kinaseの活性化が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書において2018年度は、「オートファジー誘導に関する分子機構の解明」を目的に、β-glucanで刺激した破骨細胞前駆細胞に対し、GFP標識LC3抗体を用いた蛍光染色法による細胞内動態の観察や、オートファジーの各進行過程に関連する制御分子の発現や活性化についてWestern blotting法、分子間相互作用について共免疫沈降法を用いて解析する研究計画を設定した。研究実績の概要にあるように計画通りの研究を遂行し、破骨細胞において、β-glucanとdectin-1の相互作用によるオートファジーの誘導を証明することができた。 加えて、骨系細胞にはタンパクの品質を管理する機構が必要で、これに小胞体ストレス応答が使われる。この応答において、小胞体内に蓄積した異常タンパクを感知する3種の小胞体ストレスセンサー(PERK、IRE1、ATF6)が存在する。本申請研究において、申請者は、β-glucan刺激による破骨細胞前駆細胞におけるIRE1の発現増強も見出した。IRE1は、破骨細胞分化を制御することが報告されており、β-glucanによる破骨細胞分化抑制には、小胞体ストレス応答も関与していることが示唆された。 破骨細胞は骨組織の約1%程度であるが、骨粗鬆症における骨量減少や、関節リウマチ、歯周病等の炎症性骨吸収の中心的役割を果たしており、これらを制御する技術が求められている。骨と免疫系は密接に関係しており、この相互作用にフォーカスした融合領域は「骨免疫学」として発展してきた。免疫系による骨代謝制御に関して、細胞質の大規模なタンパク分解システムであるオートファジーとともに小胞体ストレスの関与を証明したことは、骨免疫学研究の加速化・重層化・統合化に繋がると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内の代謝システムの統合的な制御には、細胞内の輸送システムであるオートファジーと並び、細胞外物質を取り込み、リソソームに輸送するエンドサイトーシスが関わっている。我々は、sucroseによるクラスリン依存性、methyl-β-cyclodexitrinによるカベオラおよび脂質ラフト依存性エンドサイトーシスの阻害より、curdlanに誘導されるsykタンパクの分解が回復することを見出している。このことから、β-glucanによるオートファジーを介した分解系の誘導にエンドサイトーシスが関与していることが示唆された。そこで、β-glucan添加後の細胞における、クラスリン、カベオリンタンパクの発現と局在を蛍光顕微鏡視下に観察する。 一方、小胞体ストレス応答において、IRE1は異常タンパクを感知すると立体構造が変化し、転写因子である活性型XBP1が産生される。IRE1-XBP1経路は、小胞体の恒常性に関わる一方、重度のストレスが負荷されると、IRE1は、Ask1、JNKを活性化してアポトーシスを誘導する。β-glucanによるIRE1発現増強の小胞体ストレス応答への関与について、XBP1、Ask1とJNKの活性化について解析する。関与が示唆された経路については、ノックダウン実験を行い、破骨細胞分化への影響を確認する。 さらにβ-glucanとして、curdlanを中心に解析を行ってきたが、laminarin、lichenan、glucan from baker’s yeast、β-1-3-glucan from Euglema gracisは、curdlanと同様、破骨細胞分化抑制能を示した。その一方で、破骨細胞分化抑制能を示さないβ-glucanも確認され、各種β- glucanのキャラクタリゼーションについて物質化学の観点からの解析も追加していく。
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Causes of Carryover |
オートファジー誘導に関する分子機構の解明について、当初購入を予定していた研究試薬の購入費が少なく済んだためである。翌年度は、オートファジーとエンドサイトーシスの協調に関する分子メカニズムの解明に加え、小胞体ストレスおよびβ-glucanのキャラクタリゼーションも必要となるため、同研究に必要な試薬購入費として、計上する。
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