2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K09800
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
北野 尚孝 日本大学, 医学部, 准教授 (50424726)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 癌 / 遺伝子治療 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度までの研究では、週1 回のマウス移植腫瘍に対する局所注射法により行われたE3C1 における遺伝子療法の効果は明らかになっており、副作用の発現も確認されていない。そのことを解明するために平成30年度は、Del1 由来の E3C1 が、血管内皮細胞やがん細胞の細胞膜の性状に与える影響を検討するために in vitroの実験を行った。 E3C1がリピッドラフトの形成に関与しているかどうかをコレラトキシンB(以下CTxB)を使用し検討した。蛍光色素が付与されているCTxBはリピッドラフトを可視化する際によく用いられる方法である。その結果E3C1はリピッドラフとの形成に関与していることが明らかになった。 またE3C1で処理した細胞のリピッドラフトに、マイクロドメインとして知られているカベオラがCTxBと共存するかどうかを検討した結果、カベオラとCTxBの共存が確認された。さらに、コレステロールに強い親和性があるDiLにて細胞膜を染色し、CTxBを作用させたときのE3C1が与える細胞膜への影響を観察した。 その結果、E3C1で処理することでCTxBの染色が亢進することにより、DiLの染色も亢進していることが観察された。 次に、細胞膜上のフォスファチジルセリン(以下PS)の存在を検討した。E3C1で処理した細胞はCTxBの染色が亢進し、それと共存するようにアネキシン5の染色も亢進した。さらに、アネキシン5とはPSの別部位を感知し染色するAnnexinXIIを使用し、アネキシン5と共染色したところ、E3C1で処理することによりAnnexinXIIでもPSの染色性が亢進することが明らかとなった。 以上のようにin vitroの実験系でE3C1は細胞膜の性状の変化に影響していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度までの研究でE3C1によるマウス移植腫瘍に対する遺伝子治療で移植腫瘍の腫瘍縮小効果や移植腫瘍を有するマウスの生存率の向上が確認されていた。しかし、E3C1による遺伝子治療で移植腫瘍の腫瘍縮小効果や移植腫瘍を有するマウスの生存率の向上の機序は解明されていなかった。それが、平成30年度の研究でE3C1はリピッドラフとの形成に関与し、カベオラとの共存も確認された。さらにE3C1で処理することにより細胞膜のコレステロールの性状に変化を与え、細胞膜でのPSの反転にも影響を与えていた。このことにより、次年度より、市販の遺伝子導入試薬を用いて、コントロール遺伝子と E3C1 遺伝子をヌードマウス移植腫瘍に導入すると同時に抗PS抗体薬をヌードマウスに投与し腫瘍増大や生命予後に与える影響を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度はヌードマウス移植腫瘍に与える影響とマウスの生命予後に与える影響をE3C1 による遺伝子治療+抗PS抗体薬とカルボプラチン+抗PS抗体薬で比較し検討する。まず、がん細胞をヌードマウスの背部皮下に注射しマウスに移植腫瘍を作成する。腫瘍サイズが50mm3に達した移植腫瘍に対してpE3C1+抗PS抗体薬とカルボプラチン+抗PS抗体薬を用いて週に1回の遺伝子治療を行う。経時的に移植腫瘍の大きさを計測し、予後を評価する。また、遺伝子治療中に副作用の発現の有無を常に観察し、副作用の発現率、発現内容や発現部位などを観察する。さらに、pE3C1+抗PS抗体薬で治療を行った群、カルボプラチン+抗PS抗体薬で治療を行った群の生存率をKaplan-Meierの生存曲線にて検討する。
しかし、平成30年度より抗PS抗体薬を入手しようと試みているが、未だに入手できていない。そこで、抗PS抗体薬が入手できない場合、ヌードマウス移植腫瘍に与える影響とマウスの生命予後に与える影響をE3C1 による遺伝子治療+シスプラチンとシスプラチンで比較し検討する。まず、がん細胞をヌードマウスの背部皮下に注射しマウスに移植腫瘍を作成する。腫瘍サイズが50mm3に達した移植腫瘍に対してpE3C1+シスプラチンとシスプラチンを用いて週に1回の遺伝子治療を行う。経時的に移植腫瘍の大きさを計測し、予後を評価する。また、遺伝子治療中に副作用の発現の有無を常に観察し、副作用の発現率、発現内容や発現部位などを観察する。さらに、pE3C1+シスプラチンで治療を行った群、シスプラチンで治療を行った群の生存率をKaplan-Meierの生存曲線にて検討する。
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Research Products
(2 results)