2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K09800
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
北野 尚孝 日本大学, 医学部, 准教授 (50424726)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 癌 / 遺伝子治療 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度はヌードマウス移植腫瘍(A431,SCCKN,SCC4)に与える影響とマウスの生命予後に与える影響をシスプラチン(CDDP)とCDDP+E3C1 による遺伝子治療で比較し検討した。まず、がん細胞をヌードマウスの背部皮下に移植腫瘍を作成し、CDDPとCDDP+E3C1を用いて週に1回の治療を行った。経時的に移植腫瘍の大きさを計測し、予後を評価した。また、遺伝子治療中に副作用の発現の有無を常に観察した。さらに、シスプラチンで治療を行った群、CDDP+E3C1で治療を行った群の生存率をKaplan-Meierの生存曲線にて検討した。 A431を移植したマウスでは、治療後11日目の腫瘍体積の平均が、コントロール治療群のマウスで3149.071±1139.171mm3、CDDP治療群のマウスで1843.583±556.3021mm3、CDDP+E3C1治療群のマウスで1514.071±471.3341mm3 であった。また、生命予後はCDDP+E3C1治療群、CDDP治療群、コントロール治療群の順に長かった。SCCKNを移植したマウスでは、治療後11日目の腫瘍体積の平均が、コントロール治療群のマウスで3990.625±1403.377mm3、CDDP治療群のマウスで3468.375±757.4571mm3、CDDP+E3C1治療群のマウスで1177.875±481.3502mm3であった。また、生命予後はCDDP+E3C1治療群、CDDP治療群、コントロール治療群の順に長かった。SCC4を移植したマウスでは、治療後11日目の腫瘍体積の平均が、コントロール治療群のマウスで2702±394.405mm3、CDDP治療群のマウスで3135.5±870.581mm3、CDDP+E3C1治療群のマウスで619.1±105.532mm3。また、生命予後はCDDP+E3C1治療群、CDDP治療群、コントロール治療群の順に長かった。また、どのマウスにおいても治療中の副作用の発現は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度までの研究でE3C1によるマウス移植腫瘍に対する遺伝子治療で移植腫瘍の腫瘍縮小効果や移植腫瘍を有するマウスの生存率の向上が確認された。 しかし、E3C1による遺伝子治療とシスプラチン(CDDP)などの抗がん剤を併用し治療を行うことで移植腫瘍の腫瘍縮小効果や移植腫瘍を有するマウスの生存率の向上の機序は解明されていなかった。それが、令和元年度の研究でCDDP 単独で治療を行うよりもCDDP+E3C1の併用療法を行う方が腫瘍の増殖速度を減少させることやマウスの命予後を副作用の発現を伴わず改善することが確認された。 このことにより、次年度より、CDDP 単独治療とCDDP+E3C1の併用療法を行った移植腫瘍の組織にどのような影響が及ぼされたのかを検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度のCDDPとCDDP+E3C1 による遺伝子治療を行ったヌードマウス移植腫瘍が縮小される効果を認め、さらにCDDP+E3C1で治療を行った腫瘍が弾性軟となることより腫瘍の間質に大きく影響が与えられているのではないかと考えられた。それ故、令和2年度はシスプラチン(CDDP)とCDDP+E3C1 による遺伝子治療を行ったヌードマウス移植腫瘍がどのような影響を受けているのかを組織学的に検討する。まず、まず、がん細胞をヌードマウスの背部皮下に移植腫瘍を作成し、CDDPとCDDP+E3C1を用いて週に1回の治療を行う。治療開始から11日目のマウスの腫瘍を摘出しCDDPまたはCDDP+E3C1による治療が与える効果についてH-E染色をおこない、検討する。その後、CDDPとCDDP+E3C1の治療開始から11日目のマウスの尾静脈よりインディアンインクを静脈内投与し、腫瘍血管を描出する。その後に腫瘍を摘出し腫瘍血管の血管新生や血管形成に与える影響を実態顕微鏡を用いて観察し検討する。一方、CDDPとCDDP+E3C1の治療開始から11日目のマウスの尾静脈よりトマトレクチンを静脈内投与し、腫瘍を摘出する。摘出した腫瘍を凍結し切片を作製する。その後、切片を抗アルファスムースマッスル抗体によって染色し血管と間質の関係を蛍光顕微鏡を用いて観察する。さらに、摘出した腫瘍を抗CD31抗体で染色し腫瘍の間質における血管に与える影響を検討する。
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