2021 Fiscal Year Research-status Report
バーニングマウス症候群の発症機序ー性ホルモンとストレス,神経障害性疼痛の関係
Project/Area Number |
18K09801
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今村 佳樹 日本大学, 歯学部, 教授 (90176503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 明子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10434078)
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 教授 (20362238)
篠崎 貴弘 日本大学, 歯学部, 講師 (50339230)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 特任教授 (60160115)
野間 昇 日本大学, 歯学部, 准教授 (70386100)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔灼熱痛症候群 / CPM / 痛覚変調性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、過去の研究で口腔灼熱痛症候群(BMS)の病態解明に努めてきた。これまでに、多くの研究者がBMSの病因として提唱している末梢神経障害機序について、定量感覚検査(QST)の結果からは、神経障害を示す特徴的な所見が再現しにくいこと、一方、侵害刺激が加わっているときの中枢性の疼痛調節機能がBMS患者では損なわれていること、それに合わせて下行性疼痛抑制にかかわる脳部位(前頭前野、島皮質、海馬等)の活動が減弱していること等を示し、BMSが痛覚変調性疼痛の一種であることを示してきた。平成30年からの研究では、BMS患者と健康対照を用いて痛みの中枢性調節機構を反映するConditioned Pain Modulation (CPM)について検討を行い、BMS患者のCPMの生じ方は特に情緒ストレスの強度が強いほど生じにくい(抑制が大きい)ことを明らかにした。この結果は、前述した下行性疼痛抑制にかかわる脳の領域では、BMS患者で安静時接続が情緒ストレスに伴って障害されており、この中枢性の疼痛抑制の障害と一致している。また、QSTの結果からは、閉経後の期間によって、BMS患者のQSTにおいて機械刺激に対する疼痛閾値の低下の程度に相関がみられることから、性ホルモンの低下がBMSの発症に何らかの影響を及ぼしている可能性についても明らかにした。これらの結果は、痛覚変調性疼痛としての脳活動の特徴を表しているが、この機能抑制がいかなる機序で生じているかについては不明で、さらなる病態解明が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該研究は、BMS患者並びに健常者を対象として、疼痛調節における脳機能を観察する臨床研究とラットを用いた性ホルモン、神経保護ホルモンの影響を見るための基礎研究からなる。令和元年度は、臨床研究、基礎研究とも予定通りに進めることができたが、令和2年度からは、コロナ禍において特に臨床研究の遅れが生じた。令和2年度、3年度はコロナ禍で、研究協力をお願いしている日本大学医学部附属板橋病院でのfMRI研究を予定通り進めることが困難であったことから、臨床研究としての口腔灼熱痛症候群(BMS)患者の自律訓練法前後、ガム咀嚼前後の脳活動の計測を行うことができなかった。これを受けて令和2年度からは、臨床研究では、研究方法をfMRIを用いた研究から精神物理学的な研究に重点を移し、Controlled Pain Conditionによる中枢の疼痛調節機能の変調を見ることで、BMSにおける疼痛調節機構の障害を明らかにしてきた。また、動物を用いた基礎研究では、卵摘動物を用いて性ホルモンの減少が、舌粘膜上皮の細径神経線維の密度の減少をもたらすことを観察した。令和4年度を用いて、当初計画にあったfMRIによる下行性鎮痛機構の賦活がBMS患者と健常者の脳活動にどのように影響するかを観察したい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、BMSの病態は、何らかの理由で痛みの調節機構である中枢の下行性疼痛抑制系が十分に機能できない状態があることが明らかとなった。これは、疼痛調節を担う脳領域の機能的結合に障害があることを示している。また、この機能障害には、情緒ストレスが影響していることも示唆されている。ここで生じる疑問として、安静時のこれらの疼痛調節に関与する脳領域の機能的結合が抑制されているからBMSの疼痛が生じるのか、これらの脳領域に負荷をかけたときにも、それに応じた疼痛調節機能の賦活がみられずに疼痛が増悪するのかという点である。令和4年度は研究期間延長をして、前述の下行性疼痛抑制系を賦活させる介入(ガム咀嚼、自律訓練法)を行って、BMS患者と健康対照でその前後の脳活動の変化を観察したい。一方、COVID-19感染の流行状況次第では、引き続きfMRI研究が困難であることも考えられるため、並行して動物実験によって卵摘ラットを用いて舌組織における舌粘膜上皮での神経保護ホルモンの動態についても検討を加えたい。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、当初予定していた、BMS患者と健康対照を用いて、ガム咀嚼並びに自律訓練法前後の安静時脳活動をfMRIを用いて検討する研究が、コロナ禍の影響で協力施設での撮像ができず、とん挫した。このため、被験者への謝礼を含め、臨床研究を行うのに必要と考えていた費用が未使用となった。令和4年度は、コロナ禍の状況次第で、計画にあるfMRIを利用した脳機能画像研究を進める。このため、被検者に対する謝礼を計上した。一方、当初の研究計画に含まれるもう一つの研究である、ラットを用いた、神経保護ホルモンのBMSの病態における働きについて、並列で研究を進める。臨床研究が実施できない場合は、この動物研究に軸足を置いて研究を行う予定にしている。こちらは、免疫組織化学研究のための消耗品費を計上した。
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Research Products
(5 results)