2019 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼がヒト脳機能を介し全身身体機能に与える影響:非侵襲的脳機能測定法による検討
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18K09830
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮本 順 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (10451949)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 口腔 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明 ヒト高次中枢摂食機構は、栄養センサである視床下部と、快楽/報酬処理センターの二つの制御機構があると考えられている。今までは、快楽/報酬処理センターに「咀嚼」が与える影響について、eye-tracking装置を用いた眼球運動測定による研究を遂行し、国内・国際雑誌への発表を終えた。そこで今回は、快楽/報酬処理センターとは別の制御機構であり、栄養センサとして働く視床下部に焦点をあてた研究計画を、新たに立案した。この研究から、咀嚼が摂食調節機構に与える影響について、快楽/報酬処理センターのみならず、代謝の観点からも解明することができ、二つの制御機構の側面から、肥満予防の客観的なエビデンスを提示できると考えられる。 2、咀嚼時の感覚情報が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明 前歯部および臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定のため、前歯/臼歯部咬合時に、機能的磁気共鳴画像法[functional magnetic resonance imaging (fMRI)]と咀嚼筋筋電図の同時計測を行い、両者の脳賦活パタンの違いを検討した。その結果、関心領域における脳賦活パタンは、前歯/臼歯 部咬合により相反する様相を呈することが示された。この結果より、前歯/臼歯部の役割の違いについて、解剖学的形態の違いに基づいた説明のみならず、中枢神経における咀嚼運動制御機構、特に力の制御の観点から説明することができると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、咀嚼が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明 快楽/報酬処理センターとは異なる摂食調節機構である、栄養センサである視床下部に焦点をあてた研究計画を立案した。この計画においては、刺激や課題を用いず安静にすることのみが求められるresting-state fMRIを使用することを想定しているが、過去に本法を用いた研究を遂行したことがないため、最適な撮像方法の模索、解析方法の学習をした。 2、咀嚼時の感覚情報が高次中枢摂食調節機構に与える影響の解明 前歯/臼歯部咬合時のfMRI-咀嚼筋電図同時計測を行ったこの結果を、国際雑誌Scientific Reportsに発表し、研究がおおむね順調に進んだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1、咀嚼が摂食調節機構に与える影響の解明 トライアルで撮像したresting-state fMRIは、画像の歪みが著しく画像処理のみでは補正できない状態であるため、まず始めに最適な撮像条件を模索する。その後、過去の研究結果の再現が可能であるか、確認を行う。撮像条件が決定したのち、咀嚼条件の撮像タイムコースについても検討し、予備実験へ移行していく予定である。 2、前歯/臼歯部咬合の違いによる咀嚼運動時の神経機構の同定 今回の研究結果は、口以外の体部位において運動制御を司る脳部位を関心領域として、脳賦活パタンが前歯/臼歯咬合時においても異なることを示した。今後は、関心領域を定めず脳全体を対象として、前歯/臼歯咬合に関わる脳部位を網羅的に探索していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、実験で使用する機器等を共同研究を行った施設の備品を利用したため、物品費等が予定額より少なくなった。しかしながら、今後は東京医科歯科大学・歯学部付属病院に通院する、不正咬合等の患者を含めた被験者に実験に参加していただくため、被験者の負担軽減のために、東京医科歯科大学・歯学部付属病院にて実験を行えるよう、実験機器等の物品を購入する予定である。 さらに今年度は、今まで遂行してきた研究計画のひとつに関して、研究成果をまとめ発表することに研究活動の重きをおいたため、被験者に対する実験の遂行は少なかった。しかしながら、今年度は新たな実験計画も立案したため、今後は被験者に支払う人件費がかかる予定である。
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Research Products
(3 results)