2018 Fiscal Year Research-status Report
母体血中の終末糖化産物による胎児形態異常発生のメカニズムの解析
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18K09845
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
太田 一正 東京医科大学, 医学部, 准教授 (30307376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 洋一 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (10637664)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 終末糖化産物 / 終末糖化産物受容体 / AMP活性化プロテインキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
母体栄養状態が胚発生におよぼす影響についてはその結果がもたらす大きさにもかかわらず,分子レベルでの解析は進んでいない.糖尿病患者は増加・若年化しており,患者が出産する機会も増加すると考えられる.これにともない,高血糖状態により生じる終末糖化産物(advanced glycation end products; AGEs)が胎児発生に影響を与える可能性が十分に考えられる. AGEsの細胞毒性とシグナル伝達の関係を調べるため,ヒト歯肉上皮由来細胞株Ca9-22およびマウス骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1およびヒト骨髄性慢性白血病細胞株U937を用いてAGE-ウシ血清アルブミン(BSA)による影響を検討した.すべての細胞株で細胞増殖が抑制されている傾向が認められたが,コントロールBSAと比較しても有意差は認められなかった。また,これらの細胞株では,ウェスタンブロットによる解析でAGEs受容体であるRAGEの発現は認められなかった.同様に,AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化を,抗リン酸化AMPKα抗体による解析をおこなったが,AMPKの著しい活性化などは認められなかった.成体のマウス各組織を用いてRT-PCRおよびウェスタンブロットによる解析を行った結果,これまで報告のある肺以外での発現はほとんど認められなかった.したがって,これまで報告されているAGEsの作用は,受容体を介した機序を経ないものと考えられる. 非侵襲的な体内AGEs蓄積量の検出では光学的原理を用いた機器が販売されている.より正確な非侵襲的な評価法を確立するため,研究者および研究協力者の唾液を用いて,ELISA法による唾液中AGEsの検出および蛍光分析を行った.さらに,糖化唾液タンパク質を抗AGEs抗体によるウェスタンブロット法による解析も行った.いずれの方法でも唾液中にAGEsが認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は,培養細胞やマウス成体個体を用いた解析を中心に行った.したがって,計画していたモデルマウスを用いた動物実験による検討を行うことができなかった.また,マウス胎児線維芽細胞など胎児組織を用いた検討も行うことができなかった.しかし,体内AGEs蓄積量の非侵襲的解析法の検討などを計画に加えて行った.
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Strategy for Future Research Activity |
AGEs投与マウスおよびその妊娠マウスを用いて,発生期の胎児形態(顎顔面部を中心とした)の形態学的評価およびアポトーシスの検出を試みる.また,母体血清および羊水中のAGEs,炎症性サイトカイン,酸化脂質マーカーのELYSAによる検出と糖化タンパクの特定化を行う.さらに,これらのマウスにおいて胎盤および胚組織のRAGE発現のqRT-PCRなどによる解析を行う予定である.同様の検討を,糖尿病モデルマウスを用いても行う予定である.
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Causes of Carryover |
当初予定していた設備備品については,交付決定前に整備されたため,消耗品費として多くの予算を使用した.次年度も今年度同様の消耗品費が必要となることが予想され,次年度使用額分を次年度の消耗品費として使用することとした.また,学会発表旅費等は,今年度は学会発表を行わなかったため,次年度以降使用することとした.
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