2019 Fiscal Year Research-status Report
口蓋発生における細胞外環境因子としてのECMによるシグナル制御
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18K09849
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
岡 暁子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (60452778)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TGF-βシグナル / 軟口蓋形成 / Tenascin C / SHHシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
口蓋が形成される際に働く増殖因子とその受容体、活性化される転写因子の関わりは次第に解明されてきている。一方で、様々な細胞外マトリックス分子が顔面発生期の口蓋突起に発現しているにもかかわらず、これらが「細胞外環境因子」として口蓋形成にどのように影響しているかについては不明である。これまでにも、口蓋発生におけるTGF-βシグナルの役割について解析を行ったきたが、本研究課題においては、TGF-βシグナルによる調節を受けている細胞外マトリックスとTGF-βシグナル活性を制御している細胞外マトリックスの2つの方向から解析を進めている。 当該年度は、この2つのうち、TGF-βシグナルによって調節を受けている細胞外マトリックスの解析について新たに展開できた。口蓋発生に重要な細胞外マトリックスについては、Periostin, Tenascin C, Fibronectin, Type I Collagenに焦点を当て、特にTenascin C蛋白の発現パターンおよび口蓋形成における役割についての解析を中心に、以下の点について明らかにした。 ①Tenascin C蛋白は、軟口蓋形成領域の口蓋間葉組織に特徴的に発現する。②口蓋間葉組織のTenascin C蛋白の発現は、口蓋上皮のTGF-βシグナルの影響をパラクラインに受けている。口蓋上皮でTGF-βシグナルをノックアウトしたマウスでは、軟口蓋領域の口蓋間葉組織でのTenascin Cの発現が明らかに低下している。③口蓋上皮TGF-βシグナルの下流で口蓋上皮SHHシグナルが機能しており、SHHシグナルの活性化が軟口蓋領域でのTenascin Cの発現を調節する役割がある。軟口蓋領域においてSHHシグナルがノックアウトされたマウスにおいても、Tenascin Cの発現低下が起こっている。 以上のことから、口蓋上皮のTGF-βシグナルは、SHHシグナルを介してTenascin C発現を調節することで軟口蓋形成に重要な役割を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顔面神経堤由来のマウス神経堤細胞株を入手したことによって、機能解析を推進することができた。さらに口蓋形成に重要となるTenascin C蛋白発現の役割についてSHHシグナルの関与を明らかとし、論文発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
TGF-βシグナルを制御する細胞外マトリックスについての解析に重点をおいて研究を推進する。組織学的な解析から、培養細胞、特に顔面神経堤細胞由来のマウス細胞株を使った解析をすすめていく予定である。
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Causes of Carryover |
参加予定の学会開催中止に伴い、旅費についての繰り越しが発生した。次年度の学会参加費に充当する。
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