2019 Fiscal Year Research-status Report
基礎的・臨床的エビデンスを融合した低ホスファターゼ症包括的歯科診療システムの構築
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18K09854
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大川 玲奈 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (80437384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古々本 一馬 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (00803107)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 低ホスファターゼ症 / 乳歯早期脱落 / セメント質形成不全 / アルカリホスファターゼ / 骨系統疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
低ホスファターゼ症は、骨の石灰化不全を認める遺伝性の骨系統疾患である。歯科的には4歳未満での乳歯の早期脱落を認める。診断時年齢と症状によって、周産期重症型、周産期良性型、乳児型、小児型、成人型、歯限局型の6つの病型に分類され、一般的に発症年齢が低いほど症状は重篤であるが、病型と歯科症状の関連は不明である。また、近年、酵素補充療法が開始され、乳歯が萌出するまで生存できなかった重症型の小児の生命予後は大幅に改善されたものの、ヒトへの歯科的影響に関する報告はない。さらに、乳歯の早期脱落に関しては、根本的治療法は確立されていない。 本年度は、昨年度に歯科全国実態調査から構築した歯科データベースをもとに、低ホスファターゼ症の病型と歯科症状の関係について分析した。その結果、診断時血中ALP値は歯限局型が歯限局型以外の病型よりも有意に高かった。歯限局型の89%が常染色体優性遺伝であったのに対して、歯限局型以外の病型の96%が常染色体劣性遺伝であった。ALP活性を有さない日本人特有の変異である“c.1559delT”は全症例の70%に認められた。歯科症状に関しては、歯限局型では100%の乳歯早期脱落を認めた一方で、歯限局型以外の病型では、56%の症例において乳歯早期脱落が認められた。歯(エナメル質・象牙質)の石灰化不全は42%の歯限局型以外の病型において認められたのに対して、歯限局型で歯の石灰化不全を有した症例はなかった。以上の結果から、歯限局型と歯限局型以外の病型の遺伝形式は有意に異なり、低ホスファターゼ症の治療に際しては、この違いを考慮することが重要であることが示唆された。 また、歯科的根本治療法の開発を目的として、昨年度に確立した低ホスファターゼ症患者由来の歯周細胞の抽出・培養方法を用いて、今年度も引き続き、様々な病型の患者由来の歯周細胞を採取した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低ホスファターゼ症モデルマウスへの全身的治療法の歯科的影響の評価を計画していたが、モデルマウスの入手が困難となったため、新たに設計、作製することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
低ホスファターゼ症の歯科全国実態調査で構築した歯科データーベースとその分析結果をもとに、診療ガイドラインを作成する。 また、低ホスファターゼ症モデルマウスを新たに作製し、全身的治療法の歯科的影響を評価する。 さらに、低ホスファターゼ症患者由来歯周細胞を用いて、石灰化誘導実験を行い、歯周細胞の石灰化能の評価を行う。細胞に様々なサイトカインを添加し、細胞機能への影響を評価することによって、小児患者に対する新規の再生治療の開発に向けた検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
低ホスファターゼ症モデルマウスへの全身的治療法の歯科的影響の評価を計画していたが、モデルマウスの入手が困難となったため、研究計画が遅延し、次年度使用が生じた。 次年度に、モデルマウスを新たに設計・作製して、全身的治療法の歯科的影響の評価を行う予定である。
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