2021 Fiscal Year Research-status Report
高密着性、高柔軟性を有する高水素含有DLC成膜へのプラズマを用いた抗菌機能の付与
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18K09864
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
六車 武史 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (20343436)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 矯正用ワイヤー / DLCコーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正用材料にDLCコーティングを施し、その摩擦特性と細菌の付着性について検討し、DLCコーティングが摩擦特性と細菌付着特性を改善することを実証してきた。本研究領域において、DLCの密着性と脆性の改善が大きな課題である。これまでの申請者の研究結果においても、材料に摺動性が効果的に発揮できる膜厚のDLCをコーティングした場合、材料のたわみによりDLC層の剥離と破壊が認められた。DLCへのフッ素添加により脆性が改善されるが、密着性が低下することが報告されている。非晶質(アモルファス)構造を有するDLCは、Sp3(ダイヤモンド)構造、Sp2(グラファイト)構造および水素から構成され、より高濃度の水素を含有させることにより、高い密着性、柔軟性、および形状追従性を有するDLC成膜が可能なものと考えられる。 本研究の目的として、DLCコーティングの水素量をコントロールすることにより、密着性と柔軟性に優れる高水素含有DLCの創成を試みることであるが、試料として矯正用ステンレス鋼ワイヤー(.017”×.025”)にプラズマイオン注入成膜装置を用いて、到達真空度1.33×10-3Paにて2つの条件下でDLCコーティングを施したワイヤー(DLC1:ターゲット電圧10kV、アセチレンとトルエンの混合ガスを3分間堆積 DLC2:ターゲット電圧7kV、トルエンガスを4分間堆積)を作製した。DLCコーティング層の厚みはDLC1、DLC2とも0.3マイクロメートルであり、矯正用ワイヤーの1/1000程度の厚みであり、矯正用ワイヤーとして臨床的に十分許容できるものであると考えられる。またラザフォード後方散乱分析での最表層部の水素含有量はDLC1で29%、DLC2で33%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DLC1、DLC2および未処理の矯正用ステンレス鋼ワイヤーについて押し込み深さ1.0mmと1.5mmの2種類の3点曲げ試験を行いコーティング層の剥離の違いを検討した結果、1.0mmでは剥離等は見られなかったが、1.5mmでは2種類のコーティングワイヤーとも剥離が観察された。 DLC1、DLC2および未処置の矯正用ステンレス鋼ワイヤーを10°のアンギュレーションを付与したブラケットに通し、乾燥状態と口腔内を想定した人工唾液を用いた湿潤状態での摩擦係数の計測を行ったところ、乾燥状態での静摩擦力には違いはなかったが、湿潤状態ではDLC2で低い摩擦係数を認めた。 DLC1、DLC2のコーティング層の表層部はともに未処理のワイヤーに比べ高い弾性係数を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
実際のブラケットと矯正用ワイヤー間における接触によるコーティング層の密着性の評価を行い、口腔内を想定した人工唾液に用い電気化学的に生じる腐食現象について考察を加える。
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Causes of Carryover |
次年度の実験の遂行のため、実験用試薬等や実験用器具の購入にあてるため、今年度の使用を抑えていた。
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