2018 Fiscal Year Research-status Report
小児期における口腔機能発達評価指針作成のための調査研究
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18K09869
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
木本 茂成 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (90205013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅里 仁 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (40317566)
藤田 茉衣子 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (20784797)
田村 文誉 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (60297017)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔機能評価 / 口唇閉鎖力 / 舌圧 / 口腔形態 / 三次元計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究における予備的な実験として、成人における口唇閉鎖力・舌圧の測定値と歯列模型から得られた三次元データを用い、口腔機能と形態とを比較することにより、口腔機能が口腔形態の発育にどのような影響を与えているかについて検討を行った。本研究に関する同意を得られた本学学生で、歯列矯正治療中の者、上下顎第一大臼歯より近心側に欠損歯のある者、著しい歯冠崩壊のある者を除外した86名(男子63名、女子23名)を対象とした(年齢:男子26.3±3.3歳、女子24.3±2.2歳)。口腔機能の評価として、口唇閉鎖力測定(リップルくん、松風)、舌圧測定(JMS、GC)を行った。また、上下顎歯列はアルジネート印象材を用いて印象採得を行い、硬石膏にて模型を作成した。上顎模型の口蓋にパテ(ラボパテアルファー、DENT KIST)を、切歯乳頭と上顎両側第一大臼歯の口蓋遠心歯頸部隅角の3点を通る面と、その面と垂直で第一大臼歯の遠心を通る面ができるよう圧接し(図1)、パテの有無で2度三次元スキャンを行なった(D700、3shape)。計測はGeomagic ControlX(3D System)を使用した。口腔形態の評価項目は、上顎両側の犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯の口蓋側歯頚部最下点間距離および切縁・咬頭間距離、口蓋部の体積、口蓋全体の表面積とした。計測値の統計にはSpearman順位相関係数を用いた。 その結果、口唇閉鎖力、舌圧は男女差が認められた。女性では、口唇閉鎖力と舌圧に有意な正の相関が認められた(p<0.05)。男性では、舌圧と上顎第一大臼歯咬頭間距離、口蓋側歯頚部間距離に有意な正の相関関係が認められた(p<0.05)。以上の結果により、男性において舌圧と上顎両側第一大臼歯間距離との間に関連性があり、舌圧が上顎第一大臼歯間の距離に影響を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において、初年度に各年齢における標準データの蓄積を目標としていたが、各種口腔機能に関する検査データについては、小児患者の協力度から、咀嚼能力と咬筋活動電位については集積を進めることができなかった。しかしながら、近年、他の研究機関からの報告により、口腔機能発達の指標として幼児期から学童期にかけての口唇閉鎖力と舌圧に関する標準的なデータは確立されつつある状況から、初年度においては、成人において口腔形態と舌圧、口唇閉鎖力との相関について予備的調査に着手した。今後、比較検討を行う上で、ある程度の参考データは得られている。一方、小児の成育環境に関する調査については、現段階で調査用紙の作成段階であり、関連因子の選定と質問事項について準備を行っている段階である。 2018年度においては、口腔機能の評価項目として挙げた口唇閉鎖力と舌圧が口腔形態、特に歯列ならびに口蓋の形態との相関についての検討を行った。しかしながら、歯列石膏模型を三次元スキャナーを用いてデジタルデータとしての取り込みと解析に関する作業に長時間を要したため、限られた症例数の資料蓄積にとどまった。本年度は基礎データとして、成人において上下顎歯列模型を三次元スキャナーを用いて口腔形態のデジタルデータとして保存し、個々の被験者の口唇圧と舌圧との相関についての検討を進めた。その結果、成人における口腔機能と口腔形態との関連性を示す一定の知見が得られていることから、当初の初年度の計画より若干遅れているが、次年度以降の研究の目標設定が可能な段階まで進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の段階において計画していた各種口腔機能に関する検査については、小児患者の協力度を考慮して口唇閉鎖力と舌圧を先行してデータの蓄積を進める予定である。歯列・咬合状態と口腔機能関連検査データとの関連性の検討については、歯列模型の三次元データとしての取り込みと蓄積の後に詳細な形態的観察を進める方針である。 初年度は成人において、口腔形態と口腔機能の指標となる舌圧・口唇閉鎖力との関連性が見いだせたことから、今後は成長期における調査を進める計画である。一定の条件で口腔機能の評価を行うことが可能な幼児期の後期から学童期を中心として調査をすすめる方針である。男女差の検討や女性における関連性を検討するため,今後対象数を増やすとともに計測項目の検討も必要であると考えられる。成人において、口腔形態と口腔機能の指標となる口唇閉鎖力、ならびに舌圧との関連性について検索した後、計測項目や質問紙による生活習慣の調査についての準備を行う。 2019年度以降は、成長期にある小児を対象として、口唇閉鎖力と舌圧の測定、歯列模型による口腔内の形態計測、全身の筋肉量を測定し、質問紙による生活習慣と身体活動による調査の結果から、口腔形態と口腔機能に影響を及ぼす因子について検討を加える計画である。口腔形態の劇的な変化を伴う、乳歯列期から混合歯列期を経て永久歯列への移行期となる学齢期において、統計学的な解析を進める上で、各発育段階の必要な症例数についても再度検討を行う。さらに、高齢期において全身の筋活動量と口腔機能の関連性が報告されていることから、成長発育期における全身の筋活動と口腔機能検査データとの関連についても検討を進める計画である。
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Causes of Carryover |
当該年度に購入を予定して見積もっていたノートPCの購入額が当初よりも低い金額となったため、物品費として使用予定の金額を下回ったことによる。差額分については今後必要となる口腔機能(口唇閉鎖力、舌圧)計測等に使用する検査用消耗品の購入を検討したが、年度内に購入した場合、合成樹脂等の消耗品の長期保管が必要となり、材質の劣化を招く恐れがあるため、次年度に消耗品の購入に充当することを計画している。
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Research Products
(17 results)