2020 Fiscal Year Research-status Report
小児期における口腔機能発達評価指針作成のための調査研究
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18K09869
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
木本 茂成 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (90205013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅里 仁 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (40317566)
藤田 茉衣子 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (20784797)
田村 文誉 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (60297017)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口唇閉鎖力 / 舌圧 / 握力 / 膝進展筋力 / 骨格筋量 / 口腔機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度までに健康成人において口腔機能の指標となる口唇閉鎖力ならびに舌圧の測定値と歯列模型の三次元データから口腔形態との関連性について検討した。2020年度は小児の口腔機能の評価を行うための指標を作成することを目的として、児童に対して口腔機能検査を行い、握力・膝進展筋力などの身体機能との関連について調査を行った。6歳~12歳の健常で個性正常咬合を有する児45名(男児:27名、女児:18名)を被験者とした。調査項目としては、身長・体重、口腔機能検査(口唇閉鎖力(りっぷるくん)・舌圧測定(JMS舌圧測定器)、身体機能検査(骨格筋量測定、握力・膝進展筋力測定)を設定した。 口唇閉鎖力は、6、7、8、9、10、11、12歳でそれぞれ、7.0±2.1kPa、7.3±1.9kPa、 8.8±2.9kPa、 10.7±2.1kPa、 8.0±2.0kP、8.7±1.5kPa、 7.0±3.2kPaであり、年齢による変化はみられなかった。舌圧は、30.9±5.3kPa、 31.3±7.4kPa、 39.7±4.4kPa、 35.7±5.2kPa、 33.3±6.4kPa、 46.2±3.0kPa、 32.8±7.2kPaであった。舌圧は、9歳未満では、増齢とともに増加する傾向にあり(r=0.52)、9歳以上では変化はなかった(図1)。握力(範囲:6.5-31.1kgf、中央値:12.7kfg)・膝展筋力は(範囲:6.3-45.2kg、中央値:16.5kg) は増齢と共に増加しており、それぞれ骨格筋量と相関していた(r=0.82、 r=0.80)。骨格筋量は、舌圧・口唇閉鎖力との関連はみられなかった。握力・膝進展筋力は骨格筋量と相関していた。一方、骨格筋量は舌圧・口唇閉鎖力との相関はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度までに健康成人において口腔機能の指標となる口唇閉鎖力ならびに舌圧の測定値と歯列模型の三次元データから口腔形態との関連性について検討した。その結果、以下のような結果が得られている。1)口唇閉鎖力と舌圧に関して女性では有意な正の相関が認められた。2)男性において舌圧と上顎第一大臼歯近心咬頭間距離・口蓋側最深部間距離に有意な正の相関が認められた。3)男性において舌圧の分布と正の相関を認めた模型上の計測項目は、上顎犬歯口蓋側歯頚部最深部間距離、上顎第一大臼歯近心咬頭間・口蓋側最深部距離であった。4)女性において舌圧の分布に正の相関が認められた計測項目は前後径のみであった。2020年度は上記の研究結果に関する論文作成および投稿を行った。 2020年度は継続的な身体ならびに口腔機能の発達に関する要因を分析することを目的として、学童期の小児を対象に、身体組成(身長・体重・骨格筋量)、身体機能(握力・膝伸展筋力)、口腔機能(舌圧・口唇閉鎖力・咬合力)の測定、また生活習慣と栄養摂取状況に関するアンケート調査を実施し、その関連について検討した。口唇閉鎖力は3-6歳にかけて増加し、その後12歳まで一定となると報告されている。またAzevedoらは、舌圧は3-8歳で増加するが、その後変化は少なく、思春期後期で再度増加すると報告しており、本研究においても同様の結果が得られた。握力・膝進展筋力等の筋力は骨格筋量の指標になると報告されており、本研究においても握力・膝進展筋力は骨格筋量と相関していた。一方、全身の骨格筋量は舌圧・口唇閉鎖力との相関はみられなかった。 男女100名の児童を対象として想定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発出されたことで、本学附属病院への来院患者が大幅に減少したため、想定された被験者数が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、フレイル対策には小児期からの全身的身体機能の向上が有用であり、また成人期以降のオーラルフレイル対策が全身における身体機能の改善・推進につながると考えられている。しかし、小児期における口腔機能と身体組成および身体機能との関連に関する報告はほとんどない。今後、本研究では継続的な身体ならびに口腔機能の発達に関する要因を分析することを目的に、学童期の小児を対象に、身体組成(身長・体重・骨格筋量)、身体機能(握力・膝伸展筋力)、口腔機能(舌圧・口唇閉鎖力・咬合力)の測定、また生活習慣と栄養摂取状況に関するアンケート調査を実施し、その関連について検討を進める予定である。これまでに得られた測定値において、口唇閉鎖力は,過去の報告と有意な差はなく、本研究の対象児は平均的な集団であると考えられる。また、口腔機能は、各種機能によって成長時期が異なるため、年齢に合った機能獲得をできるよう指導していく必要があると考えられた。 今後は成長発育期の口腔機能と栄養状態、全身的運動機能との関連、また口腔機能の発達による歯列・咬合の成長への関与と精査する方針である。口腔機能発達不全の客観的評価方法、評価基準の確立に向けて、引き続き検査項目の精査を行う方針である。また、調査対象を増やしていくと同時に、栄養摂取状況についても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出されたため、附属病院への来院患者数減少により、被験対象者となる小児の人数が想定数に達しなかった。そのため、計測に使用する消耗品の支出額が予定よりも少なくなった。また、国内の学会がすべてWeb開催となったため、移動に伴う旅費としての支出がなかったこともあり、想定した支出額を下回ることとなった。
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Research Products
(12 results)