2019 Fiscal Year Research-status Report
高度医療受療している小児在宅患者に対する遠隔診療を導入した口腔管理システムの構築
Project/Area Number |
18K09893
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
町田 麗子 (榎本麗子) 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (00409228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊谷 武 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (20214744)
田村 文誉 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (60297017)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 摂食嚥下障害 / 摂食嚥下リハビリテーション / 遠隔診療 / 小児在宅医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年我が国では、シームレスな地域連携医療の構築に向けて遠隔医療を推進していくための、通信環境のコスト面や機器の充実、医学領域での電子カルテネットワーク配備など、社会的な背景が整ってきている。そこで本研究は、地域連携医療を支えうる手法として、遠隔診療を併用した歯科訪問診療システムを構築し、その背景を検証することが目的とし、高度医療を受療している小児在宅患者と家族のQOLに関与することを目指し、テレビ電話を用いた遠隔診療を導入した口腔健康管理を構築するための、介入調査を含めた4年間の研究である。 対象は、初診時に研究について趣旨を説明の上、その方法を希望した患者とその家族とする。安全面の配慮として、訪問看護師には本研究の趣旨と摂食嚥下リハビリテーション内容について事前に打ち合わせを行う。 研究方法は、初年度には遠隔診療システムのトライアルと最終検討、対象者選定を行う。また、遠隔診療システムを実施した患者、及び実施していない患者に対してアンケート調査を行う。2年目、3年目には対象者を選定し継続的な遠隔診療を実施する。最終年度にはその効果を検証する。遠隔診療は医師対患者(D to P)とし、初診は訪問診療にて必要な医療情報の収集、口腔内調査、摂食嚥下機能診断を実施し、2回目以降に対象患者自宅と当科での遠隔診療を実施する。オンライン診療実施の際には、患者自宅と当科の双方が画面上で口腔ケアや摂食指導が可能となるソフトウエアを設置する。定期的にオンライン診療を行い、通常の訪問診療と比較して、オンライン診療の効率性、有効性を検証する。有効性の検証は、診療時間、摂食嚥下機能障害の改善度、患者・家族の満足度について比較検討を行う。実施場所は、当科附属病院、及び多摩クリニックとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は遠隔診療システムの仕様検討、トライアル、最終検討と対象者選定とアンケート調査を行った。2018年度には、外来通院を行っている小児患者の保護者に106名を対象とし、遠隔診療に関するアンケートを実施した。患者の年齢は0歳8か月~43歳1か月(平均6.6±7.7歳)、保護者の年齢は20歳代~70歳代までで40歳代が44.3%、30歳代39.6%と多くを占めた。自宅と外来での患児の摂食状況が異なると答えたものは72.6%であり、その内容は食べ方、落ち着き、食べる量、食べる時間などであった。そこで遠隔診療に対する期待として、普段の状態が確認できるということが挙げられた。 また、遠隔診療での摂食指導を2018年度と2019年度に10名の患者に対して計40回を実施した。対象は男児7名、女児3名、平均年齢4歳(1歳~16歳)であった。原疾患は染色体異常4名、神経筋疾患2名、呼吸器疾患2名、代謝異常1名、発達障害1名、低出生体重児1名であった。対象者の摂食機能獲得不全段階は、経口摂取準備不全が4名、捕食機能獲得不全が1名、押しつぶし機能獲得不全が2名、すりつぶし機能獲得不全が2名、食具食器食べ機能獲得不全が1名であった。 さらに、対象者のうち3名は、従来、在宅における訪問摂食指導を実施してる高度医療受給している小児在宅患者である。3名の医療的ケア内容は、呼吸管理として、気管切開を行い人工呼吸器管理が2名、在宅酸素療法が1名であり、また栄養摂取方法は胃瘻が2名、経鼻経管栄養が1名であった。また、2名は口腔や気管内の吸引を頻回に実施していた。 2020年度は、遠隔診療の対象者を増やし、継続することで、2021年の最終年度に向けて高度医療受給している小児在宅患者を対象とした遠隔診療が、従来の訪問摂食指導と比較して効率性、有効性を検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、2020年度は対象者に対して、継続的な遠隔診療を行う。初年度のオンライン診療の効果の検証結果から、オンライン診療は患者にとってアクセスしやすい医療であると示唆された。一方で医療者側・患者側ともにコメディカルや家族など複数人で対応することが,より望ましいと考えられたため、患者宅での訪問看護師の同席など、オンライン診療環境も再検討していく予定である。対象患者は初年度同様に、次に示す5項目を満たす者とした.①初診を含めた少なくとも1回以上,当科外来の小児摂食外来を受診し,評価・診断・リハビリテーション計画の立案を行っている,②全身状態が安定している,③嚥下機能が獲得されており,経口摂取している,④本人および保護者または介護者に本研究の説明を行い,オンライン診療で伝達できる情報などに限界があることを理解したうえで,同意している,⑤オンライン診療の実施に対して必要な設備を自宅に有している.必要な設備とは自宅にWi-Fi環境を構築し,カメラ付きタブレットまたはカメラ付きスマートホンなどを所持しインターネットに接続している。2回目の受診以降に遠隔診療を開始し、最長3ヵ月に1回の訪問診療と1~4週ごとの遠隔診療を継続する。その頻度は患児の状態や口腔衛生状態、リハビリテーションの実施状況などにより、総合的に判断を行う。 最終年度の2021年度には、小児在宅療養患者に対する摂食支援地域連携プログラムの効果検証を行う。2年間の遠隔診療を導入した訪問口腔健康管理を終了後に、初年度に行ったものと同様のアンケート調査を行い、その効果を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
未使用額が発生した状況:2019年度に、従来訪問さらには外来での摂食指導を行っている対象者に対してオンライン診療の実施を行い、その効果について学会にて発表する予定であった、しかし、オンライン診療を希望する対象患者数が少なく、学会への発表ができなかったために未使用額が生じた。 次年度における未使用額の使途内容:2020年度には現在の対象者に加え、新たな対象者も加えてオンライン診療の実施を行い、その効果について、学会にて発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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