2020 Fiscal Year Research-status Report
黄色ブドウ球菌の咽頭保菌の実態解明および口腔保健行動による除菌の検討
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18K09917
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
村井 美代 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00200254)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 咽頭保菌 / 口腔保健行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症流行に伴い、新規の保菌調査を伴う研究の実施は見送らざるを得なかった。そこで、過去に行ったアンケート調査の再解析を行い、次に行う介入研究の準備期間とした。 口腔保健行動にかかる2016年に実施したアンケート調査の結果、黄色ブドウ球菌の咽頭保菌に影響する要因としてこれまでは、口腔保健学専攻学生に比べて臨床検査学専攻の学生、歯磨き回数1日3回以上に比べて1日2回以下、歯間清掃補助具の使用者に比べて未使用者で、咽頭への黄色ブドウ球菌の保菌リスクが高いことが明らかになっていた。しかし、口腔学生は元々口腔保健行動が活発であることが歯磨き回数や歯間清掃用具の結果に反映されていることも予想され、結果の解釈に疑問が残っていた。 そこで2016と2017年に実施した保菌および口腔保健行動に関するアンケート調査を合わせて再度解析した(n=267)。咽頭保菌に対して影響が大きいと思われるのは専攻(検査専攻/口腔専攻のオッズ比:3.82、95%信頼区間:2.29-6.38)、ついで歯間清掃補助具(使用なし/ありのオッズ比:2.20、95%信頼区間:1.35-3.64)、1日の歯磨き回数(2回以下/3回以上のオッズ比:2.07、05%信頼区間:1.26-3.42)となった。また、歯間清掃補助具の種類ごとに見ていくと、有意差があったのはデンタルフロス(使用なし/ありのオッズ比:3.16、95%信頼区間:1.84-5.44)のみで、歯間ブラシや舌ブラシには有意差が見られなかった。さらに、検査専攻の学生のみを対象にこれらの項目を検討し直したが、歯磨き回数や歯間清掃用具の使用においても咽頭保菌率に有意な影響は見られなかった。従って、単に歯磨き回数を増やしただけでは検査専攻の学生の咽頭保菌は改善されないこと、歯磨き回数や歯間部清掃補助具の使用には専攻間で有意に差があることから、知識と技術が伴った口腔保健行動でないと、咽頭保菌は改善されないことが予測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度までに咽頭保菌状況と口腔保健行動の影響を知るための基礎調査のデータ取得はほぼ終わっていて、一定の知見を得ることが出来ていたため、2020年度には介入研究の予備的な調査を始める計画であった。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で、新規の保菌調査を伴う研究を見送らざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査の再解析結果に基づいて、検査専攻の学生を対象に、歯磨きまたはデンタルフロスの使用についての知識および正しい使用技術の講習を行った上で1日3回の歯磨きおよびデンタルフロスの使用によって黄色ブドウ球菌の咽頭保菌が改善するかの介入研究を行う。 また、保菌調査で得られた菌株に関して咽頭に定着しやすい菌株の特徴を探る。すでにPCRで行うことが出来る型別については一通り行っているが、さらに詳細にクローンの特徴を捉えるため、各種毒素(PVロイコシジン、TSST-1、表皮剥奪毒素、エンテロトキシンなど)などの病原因子の検索、シークエンス法を用いた型別であるMLSTを進めたい。
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Causes of Carryover |
理由:2020年度は新型コロナウイルス感染症流行のため、保菌調査は一切実施できず、採取した菌株の型別等も在宅勤務の推奨などにより、余り進められなかった。実行できたのはアンケート調査の解析および介入試験のため研究計画立案や倫理審査申請書類の準備にとどまり、予算を使用するような研究は実施できていない。 使用計画:2021年度は10月以降の介入研究を予定している。新型コロナウイルスの感染状況によっては、研究期間を1年延長して介入研究を行いたい。
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