2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌の制御を基盤としたインフルエンザ予防戦略の確立に向けた基礎的研究
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18K09920
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
神尾 宜昌 日本大学, 歯学部, 准教授 (60546472)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 歯周病原菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
毎年インフルエンザにより高齢者を中心に多くの命が失われている。そのため高齢者に対するインフルエンザ予防対策の構築は喫緊の課題である。口腔ケアがインフルエンザの発症リスクを低下させるとの臨床研究の報告があるものの、その分子メカニズムは不明のままである。そこで本研究では、口腔細菌がインフルエンザウイルスの感染と重症化に及ぼす分子メカニズムを解明し、インフルエンザ予防法として口腔ケアが有効であることを示すことを目的に本研究を実施した。 ヒト呼吸器上皮細胞株(A549細胞)を歯周病原菌であるFusobacterium nucleatum、Porphyromonas gingivalis、Prevotella intermediaにてそれぞれ前処理を行った後、インフルエンザウイルスを感染させた。その後、プラークアッセイならびにウエスタンブロットによりウイルスの増殖状態を調べた。その結果、F. nucleatumおよびP. gingivalisにて前処理した細胞においては、ウイルスの増殖促進を認めたものの、P. intermediaによる前処理では認めなかった。以上の結果から、F. nucleatumおよびP. gingivalisに共通する何かしらの因子によってウイルスの増殖が促進することが示唆された。次に、F. nucleatum による前処理細胞における、ウイルス感染時の炎症性サイトカインの発現、産生状態をリアルタイムPCRならびにELISAにより解析した。その結果、F. nucleatum による前処理によりウイルス感染時のRANTESなど炎症性サイトカインの発現、産生の亢進が認められた。以上の結果から、歯周病原菌はインフルエンザの重症化に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、F. nucleatumおよびP. gingivalisに共通する因子のスクリーニングを進めており、増殖を促進する複数の歯周病原因子をすでにある程度推定した。また、この病原因子により細胞を前処理後にウイルスを感染させた際、ウイルスの増殖を促進することを見出している。さらに、インフルエンザウイルスの増殖促進に関与する宿主の遺伝子発現に、F. nucleatumが影響を及ぼしていることをリアルタイムPCRおよびウエスタンブロットを用いて見出している。そのため、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
F. nucleatumが発現に影響を及ぼすインフルエンザウイルス増殖促進に関係する遺伝子を強発現させた細胞、もしくはノックダウンした細胞にインフルエンザウイルスを感染させる。その後、プラークアッセイ、ウエスタンブロットおよび蛍光免疫染色によりウイルス増殖状態やタンパク発現状態を調べ、歯周病原菌による増殖促進メカニズムの一端を明らかにする。 また、インフルエンザウイルス感染により誘導される炎症性サイトカインの産生が、歯周病原菌により増強されるメカニズムを明らかにするため、各種シグナルの阻害薬などを用いて解析する。さらにA549細胞以外のヒト呼吸器上皮細胞株(BEAS-2B、Detroit562など)を用いた検討も行う。
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Causes of Carryover |
人件費を支出予定であったが、次年度に支出することとなったため、次年度使用額が生じた。 研究計画に変更はなく、口腔細菌がインフルエンザウイルス感染に及ぼす影響を検討するため、次年度において研究試薬や人件費などに繰越した研究費も含めて使用する。
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Research Products
(7 results)