2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of carcinogenesis signaling mechanism by chronic periodontitis and development of drug discovery derived from Kampo medicine
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18K09929
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
王 宝禮 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (20213613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 泰弘 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00339136)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歯周医学 / 歯周病 / がん / 創薬 / 漢方薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では医療用漢方製剤であり、実際に医療の現場でも処方されている漢方薬をターゲットにし、その漢方薬がCAL27細胞のPorypyromonas gingivalis (P. g.) LPS刺激におけるIL-6産生抑制機序解明を目的としている。第一に口内炎に有効である黄連湯をターゲットにした。CAL27細胞の生存率は黄連湯10μg/mlでコントロールと同程度であったが、それ以外は濃度依存的に低下した。黄連湯は比較的低濃度で作用し、効果を示す漢方薬であると考えられる。CAL27細胞において、黄連湯はP. g. LPS刺激によるIL-6の産生を有意に抑制した。このことは、少なくとも黄連湯がLPSを介したTLRシグナル伝達を負に制御していると考えられる。黄連湯はP. g. LPS刺激によるIL-6プロモーターの活性化を有意に抑制した。この結果は黄連湯がLPSによるIL-6の産生を転写レベルで抑制している可能性を示唆する。また、黄連湯はP. g. LPS刺激によるTLRを介したNF-kBの活性化を抑制した。これは、黄連湯がTLRシグナル伝達に関わる因子の働き(活性化)を抑制することにより、NF-kBに依存した様々な遺伝子の発現を抑制している可能性が示唆される。黄連湯はP. g. LPS刺激によるCAL27細胞のIRAK4・IRAK1・JNKリン酸化を抑制した。これは、黄連湯がLPSによるTLRシグナル開始の早期に作用し、MyD88の下流シグナル(MAPKカスケードやNF-kB活性化)を抑制していると考えられる。以上このことから、黄連湯には炎症性サイトカインの産生抑制作用をもつことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株であるCAL27細胞に対して、歯周病関連細菌である代表的なPorypyromonas gingivalis 菌の病原因子であるLPS(内毒素)により培養実験でIL-6産生を確認できた。IL-6は代表的なサイトカインであるが、がん細胞の生物活性に影響を与える。つまり、本研究の第一の目的である歯周病菌ががんに関連する可能性を示唆することができた。さらに、この実験系において創薬の発想から漢方薬である黄連湯の影響を分子生物学的に解明する実験系も確立できた。この結果から本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階で本研究の第一の目的である歯周病ががんを誘発する可能性のひとつを培養細胞で明らかにできた。具体的には黄連湯によるCAL27細胞のPorphyromonas gingivalis LPS刺激におけるIL-6産生抑制機序を解明できた。黄連湯を選択した理由の背景には数千年の歴史から、黄連湯が口内炎に用いているからである。つまり本研究の作業仮説は口腔がんの初期には口内炎の症状があるため、口内炎に有効な漢方薬をターゲットにすることには必然性がある。従って、今後の研究の推進方策は口内炎の有効な漢方薬とその漢方薬を構成する生薬のIL-6産生抑制機序を解明していくことである。
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Causes of Carryover |
新型感染症コロナの影響で3密の影響もあり実験の進行に影響がでた。使用計画において、漢方薬や試薬の発注や学会などで結果を発表していく。
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