2018 Fiscal Year Research-status Report
がん遺伝子パネル検査の実装が患者・市民に及ぼす倫理的・法的・社会的課題の検討
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18K09940
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 亜貴子 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (00568678)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん遺伝子パネル検査 / がんゲノム医療 / リテラシー / ELSI |
Outline of Annual Research Achievements |
がんに関連する遺伝子を網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、医療への応用が急速に進んでおり、近い将来がんの診断・治療の在り方を抜本的に変えることが予想される。本研究は、がん患者や市民におけるがんゲノム医療やがん遺伝子パネル検査に関する懸念や期待等の意識を明らかにし、今後、がんゲノム医療を適切に推進するために必要な社会的基盤等について検討することを目的としている。 2018年度は、がん患者、がん患者家族、市民を対象として実施したがんゲノム医療やがん遺伝子パネル検査に関するインターネット調査のデータを分析し、がんゲノム医療のELSIについて検討した。その結果、がん患者、がん患者家族、市民のいずれにおいても、がん遺伝子パネル検査の認知度が低いことが明らかとなった。がん遺伝子パネル検査に関するベネフィットと懸念について、がん患者とがん患者家族は、市民よりもがんの個別化治療に関するベネフィットを高く認識している一方で、検査費用や所得による医療格差について懸念していることが明らかとなった。検査結果のデータベースへの登録について、多くのがん患者とがん患者家族が検査精度の向上に役立つと考えている一方で、約半数がデータベースに登録された検査結果データの適切な利用について懸念していることも明らかとなった。また、がん遺伝子パネル検査の検査結果のうち、遺伝性腫瘍に関する結果について、がん患者とがん患者家族の約7~8割が家族との結果の共有を希望していることが明らかとなった。がんゲノム医療の適切な推進のために、がん患者や患者の家族、市民に向けたがん遺伝子パネル検査に関するベネフィットや限界についての情報提供の充実と、検査データが登録されるデータベースの利用状況等に関して透明性を確保するための体制構築が喫緊の課題であると考えられた。これらの研究成果を論文としてまとめ、公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していたがんゲノム医療に関するインターネット調査(量的調査)のデータについて分析を行い、その研究成果を口頭発表や論文を通して公表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度も、引き続きがんゲノム医療に関するインターネット調査(量的調査)のデータの分析を行い、がんゲノム医療およびがん遺伝子パネル検査に関する態度や、ゲノムリテラシーに関連する社会経済的要因やその他の要因について検討する。さらに、2019年度に予定されているがん遺伝子パネル検査の保険適用に関する状況を把握しつつ、量的調査のデータ分析や、文献研究により明らかになったがんゲノム医療に関する倫理的・法的・社会的課題(ELSI)について、フォーカス・グループ・インタビュー等の質的調査により深く掘り下げて検討する。
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Causes of Carryover |
他事業で実施されたインターネット調査のデータを本研究に利用できたため、次年度使用額が生じた。 2019年度に実施する予定のフォーカス・グループ・インタビュー等の調査に使用する。
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