2022 Fiscal Year Research-status Report
小児がん患者に対する陽子線治療の長期的な合併症予防効果
Project/Area Number |
18K09965
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Research Institution | Ibaraki Children's Hospital |
Principal Investigator |
山口 玲子 (中嶋玲子) 茨城県立こども病院(小児医療・がん研究センター), 小児がん研究部門, 研究員 (70755529)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小児がん / 小児がん経験者 / 晩期合併症 / 健康教育 / 心的外傷後ストレス症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、陽子線治療が、X線照射による治療と比べて、小児がん患者の将来的な健康や、QOLを高めるかどうかを明らかにすることである。そのため、陽子線治療をうけた小児がん経験者と、従来のX線による治療をうけた小児がん経験者の、身体的・心理社会的状態の調査を計画した。しかしながら、X線照射をうけた群と陽子線治療をうけた群のみの比較では、N数が小さく、統計学的に有意な結果を出すことが難しいことが判明した。そのため、調査対象者を、陽子線治療・X線治療を受けた群のみでなく、筑波大学附属病院で小児がんの治療をうけた小児がん経験者全体に広げることを決定した。再発や合併症の有無のみならず、QOLや病名の理解度、性腺機能に関する質問、容姿に関する自己イメージに関する質問、健康意識に関する質問も、調査に含めた。対象者249名だった。2018年度に質問紙を対象者に送付した。住所不明で32通が返送され、60名から返答を得た。回収率は28%だった。 対象者は、白血病が18名(34.6%)、悪性リンパ腫が2名(3.8%)、脳腫瘍が13名(36.5%)、その他の固形腫瘍が19名(36.5%)だった。現在、治療の副作用がある対象者は、24名(46.2%)だった。晩期合併症について知っていた対象者は4名(6%)のみだった。小児がんの診断・治療に関する心的外傷後ストレス症状を呈した対象者は4名(6%)だった。 これらの結果から、治療終了後も、小児がんの晩期合併症についての教育と支援が必要であることが明らかになった。 そのため、予定していた前向き研究を、介入研究に変更し、介入方法を検討した。晩期合併症や、生活習慣病、がんの発症が早まること、診断と治療により、長期に心理社会的問題を起こすことがあることなどについて、情報提供し、小児がんサバイバー同士で話し合いをもつ時間も設ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
横断研究の回収率が想定以上に悪く、解析に難航している。 また、前向き研究に、健康教育の介入を追加したため、前向き研究の計画策定が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
予定した前向き研究を、介入研究に変更する。介入方法は、健康教育である。 介入のアウトカムは、本来であれば、将来の健康であるが、本研究では時間が限られているのため、それは不可能である。そのため、次善策として、健康に対する意識の変化をアウトカムとして測定する。 また、小児がん経験者から、介入研究の参加者を募集するため、参加者を集めることが難しいと予想される。筑波大学を受診した小児がん経験者だけでは、十分な参加者を確保できない場合は、茨城県立こども病院など、他の医療機関にも研究協力を呼び掛ける予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、予定していた国内学会、国際学会への参加を取りやめた。また、研究協力者との打ち合わせ等は、ビデオ会議を利用して行った。そのため、旅費がかからなかった。 今年度は新型コロナウイルスが5類感染症に分類されたこともあり、対面での学会参加や、研究打ち合わせ等を再開する。 また、介入研究の参加者に、謝礼を支払う予定である。
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