2018 Fiscal Year Research-status Report
我が国の「新薬市場独占期間」の妥当性に関する多面的検討
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18K09968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桝田 祥子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (70508150)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジェネリック / バイオシミラー / 特許権侵害訴訟 / 新薬市場独占期間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我が国の医薬品産業において、新薬開発のインセンティブを失わずに、ジェネリック・バイオシミラー市場を拡大していくための、新たな制度設計に資するためのものである。 本年度は、当初の計画通り、新薬市場独占期間に関するデータベースの構築を行う傍ら、ジェネリック・バイオシミラー製品の市場参入時期を複雑化・細分化させる制度の変遷を整理した上で、2001年以降に行われたジェネリック・バイオシミラー製品に関する特許権侵害訴訟(新薬25品目)について、動向調査・分析を行った。 調査分析の結果、2001年以降、訴訟件数自体は低水準(年3件以下)で推移しているが、この10年の市場環境の変化や関連制度の変更により、ジェネリック・バイオシミラー企業にとって、市場参入時期の判断はより難しくなっていることが示唆された。そして、それらに起因して、特許権侵害訴訟における新たな争点や判断が、確実に増加していることが明らかとなった。特に、損害賠償額の算定方法が示されたオキサロール軟膏(マキサカルシトール)、延長された特許権の効力範囲について新たな考え方が示されたエルプラット(オキサリプラチン)、バイオ後続品に対するレジュメン特許の特許権侵害が問題となったハーセプチン(トラスツズマブ)の事例は、今後への影響が大きいと考えられ、ジェネリック・バイオシミラー市場へ与えるインパクトについて、諸外国の動向を踏まえ、注視していく必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り、新薬市場独占期間に関するデータベースの構築を行う傍ら、ジェネリック・バイオシミラー製品の市場参入時期に着目し、その時期を複雑化・細分化させる制度の変遷を整理した上で、2001年以降に行われたジェネリック・バイオシミラー製品に関する特許権侵害訴訟(新薬25品目)について、動向調査・分析を行い、その結果について、学会講演および講演録(和文)、論文(査読付き英文)として発表したため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、新薬市場独占期間に関するデータ収集を行うとともに、2018年度に調査分析した特許権侵害訴訟の動向に関して、低分子医薬品とバイオ医薬品を区別して、諸外国との比較を行うなど、研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額のうち大半は物品費によるものであり、これは、医薬品関連データに関し、販売データの購入が、予算30万円に対し、実際は9万円程度にとどまったためである。次年度以降には、さらにデータ収集を行うために、販売データの購入を検討する予定である。
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