2019 Fiscal Year Research-status Report
Why epidemic period of respiraotry syncytial virus has shift to summer time?
Project/Area Number |
18K10043
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菖蒲川 由郷 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (30621198)
阿部 貴志 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30390628)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | RSウイルス / 分子疫学解析 / 臨床症状 / ウイルス量 / 海外渡航客数 / 温暖化 / RSウイルス流行時期 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、平成30年度に引き続き、本邦の11都道府県(北海道、青森、新潟、東京、滋賀、奈良、香川、山口、熊本、沖縄)の小児科臨床医の協力を得て、発熱、鼻汁、咳嗽などRS ウィルス感染症を疑われる症状を呈して受診した小児429例から、インフォームドコンセント後に鼻腔・鼻腔吸引検体を採取した。リアルタイム PCRの結果、合計369例(86.0%)が RS ウィルス陽性であった。ウイルスの型別では、A型は144(33.6%)、 B 型は66例(14.0%)と 2019-2020年シーズンは、A型の RS ウィルスが優勢であった。地域別にみても、すべての地域でA 型 が優勢であった 。前の年は B型 RS ウィルスが優勢だったため交代現象が起きたと考えられる。陽性のピークは、北海道から九州までの地域では8~9月にみられ、国の5類点感染症サーベイランス報告の結果と一致していた。沖縄は、7月にピークがあり、流行時期も4~10月と明らかに他の地域と異なっていた。沖縄は、以前から5~7月が流行期であり、本土とは大きく異なる。亜熱帯気候のため流行時期にずれが生じていると考えられる。 なお、RS ウィルスの G タンパク遺伝子型についてはA型は全て ON 1型でありB 型は BA9型であり前年度と比べて大きな変化はなかった。
RSウイルス罹患児の患者属性、型別、臨床経過とウイルス量との関係性について解析を行い、英文論文として発表した(Utsunomiya, et al., PIDJ, 2020)。2歳までの患児ではRSウイルスの排出期間は年齢とともに短くなる一方で、発熱期間は延長することが分かった。
RSウイルスの流行時期が近年冬から夏にシフトしてきている原因について解析を行ったところ、気温、湿度が高くなり、海外からの渡航客が多くなるほど、流行開始週が早くなることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床医との協力関係も良好で検体調査も順調に進んでいる。令和元年は400件以上の検体を収集することができた。現在ウイルス学的な解析を進めている。
これまで蓄積されたデータを元に、RSウイルス感染症の臨床的な特徴とウイルス量との関係について論文化し、米国の小児感染症の専門誌に掲載された。
また 日本のRS ウイルスの流行時期が冬から夏に変化してきている、原因がこれまで全く分かっていなかったが、我々の解析では、温暖化が大きな要因であることに加え、海外からの渡航客の増加が関係することが示唆された。RSウイルスには輸入感染症としての側面があることが判明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度についても、各地の臨床医に協力を依頼し RS ウイルスの検体調査を進める予定ではあるが、新型コロナウイルス感染症の流行により、患者の小児科の受診減少や、感染予防の観点から臨床医が検体採取を行いにくい状況のため、検体調査が少なくなる可能性がある。 検体調査がうまくいかない場合は、飛沫感染接触感染予防行動、患者の受診控え、海外からの渡航客の激減が RS ウィルス感染症の大きさや流行時期に与える影響について解析する予定である
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行のため、研究代表者および研究分担者が自治体のコロナウイルス対策に従事したため、解析が遅れ、未使用分が生じた。令和2年度に繰り越して解析を実施する予定。
|
Research Products
(4 results)