2021 Fiscal Year Research-status Report
石綿関連悪性中皮腫の次世代シークエンスで同定した融合遺伝子の発癌・治療標的性解析
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18K10046
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
嘉数 直樹 九州工業大学, 戸畑地区保健センター, 教授 (20264757)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 悪性中皮腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性中皮腫においては過剰発現遺伝子や融合遺伝子がいくつか発見され、悪性中皮腫の発生や進展に関与していることが示唆されている。我々は、悪性中皮腫細胞株を対象にしてRNA-seq解析を行った結果、PDPN、MET、STAT3の3遺伝子が悪性中皮腫の発生や進展に関与している可能性が高いことを見出していた。これらの3遺伝子はいずれも悪性中皮腫で過剰発現していることも既に報告されている。 Gene Expression Profiling Interactive Analysis (GEPIA) データベースで、87症例の悪性中皮腫におけるPDPN、MET、STAT3の3遺伝子のそれぞれの発現レベルの中央値を調べ、他のさまざまな癌腫における中央値と比較したところ、PDPNは多くの癌種と比べて悪性中皮腫において相対的に高く発現していた。 近年、悪性中皮腫症例において融合遺伝子が続々と同定されており、主に、EWSR1・ATF1融合遺伝子群(EWSR1-YY1、EWSR1-ATF1、ATF1-FUS)とALK融合遺伝子群(ALK-TPM1、ALK-STRN、ALK- EML4、ALK-ATG16L1)とに分けられる。これらEWSR1・ATF1融合遺伝子群とALK融合遺伝子群については、悪性中皮腫細胞株の1つにおいて、RNA-seq解析によって、ALK-SDC1とALK-RAB3Bの2つのALK融合遺伝子を同定した。SDC1(syndecan-1)は膜貫通型のヘパラン硫酸プロテオグリカンである。SDC-1の細胞表面での消失は、悪性中皮腫細胞における上皮間葉転換や浸潤能の獲得と関連している。ALK-SDC1融合遺伝子産物がdominant negative作用によって正常SDC-1産物の機能を抑制し、悪性中皮腫の上皮間葉転換や浸潤能を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が発令されている期間以外でも1年間を通して研究以外の本務である感染対策業務に時間を割かれ、研究活動に支障が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、PDPN、MET、STAT3、SDC-1の4遺伝子を中心に、悪性中皮腫の発生に関与している遺伝子についてデータ解析してみる。 加えて、最近の研究において、免疫チェックポイント分子PD-1のリガンドであるPD-L1が、悪性中皮腫の20%~70%で発現していることが明らかになってきており、我が国では2018年に切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対してヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体オプジーボの適用が承認されている。PD-L1についても、悪性中皮腫細胞株における解析データを収集する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響下、物品費が思うように執行できず、次年度使用額が生じた。したがって、次年度も主に物品費に充てる計画である。
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