2019 Fiscal Year Research-status Report
自己抗体を用いた前立腺がん新規バイオマーカーの探索
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18K10051
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
加藤 貴彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70169506)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 前立腺がん / 自己抗体 / 抗核抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫疾患は、細胞内のさまざまな蛋白質―核酸複合体、蛋白質複合体などに対する自己抗体の産生が特徴である。近年、腫瘍の新規診断マーカーとして、患者の血清に検出される自己抗体が注目されている。これら自己抗体は発生臓器や臨床症状との密接な関連も推測され、予防医学的・臨床的に重要な特異的バイオマーカーとなる可能性が期待されている。 本研究の目的は、前立腺がん発生に関与することが推測される自己抗体の分析を行い、これまでに報告してきた前立腺がん発生リスクマーカーを含めた関連性について解析する。その結果に基づき、血液レベルで検出できる新たな早期・臨床診断自己抗体バイオマーカーを発見することである。 今年度は昨年度に追加し、前立腺がん173例、健常者対照群457例のDFS70、Ro52、Ro60の自己抗体、そして健常者対照群383例の抗核抗体の分析を行った。また、前立腺がんの組織悪性度の指標であるGleason分類と臨床病期診断に関するデータクリーニングを行った。さらに、健常対象者に関しては、ライフスタイルデータ、食物摂取頻度調査データと自己抗体データとの統合を行った。 2019年、2020年の2年間で抗体値の分析が終了した症例673例、対照957例を用いて、症例・対照研究を実施した。抗体の分析後、DFS70については測定方法に問題あることが明らかとなったため解析から外し、Ro52とRo60のみを用いて症例・対照研究(症例:66.4歳、対照:59.5歳)を実施した。Ro52とRo60のいずれも、健常者の平均値+3SD以上を陽性とした。その結果、Ro52とRo60のいずれにおいても、症例群と対照群の陽性割合に関し統計学的に有意な差は認められなかった。また、Gleason分類によって、症例を6以下、7、8以上の3段階、あるいは6以下、7以上の2段階に分けて、Ro52とRo60との関連について解析を行った。しかし、このGleason分類間においても有意な差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前立腺がん症例と健常対照者の追加分析を進めた。また、前立腺がんの組織悪性度の指標であるGleason分類と臨床病期診断に関するデータクリーニングも終了し、疫学的な解析を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度が本研究の最終年度となる。これまでに分析が完了した前立腺がん673症例、対照群957例を対象として多角的な疫学解析を実施する。今年度、有力なバイオマーカーの候補対象であったDFS70の測定後に分析方法に関して問題があることが明らかとなった。そこで、他に候補対象として選定していたセントロメアに対する自己抗体であるCENP-A、CENP-Bの分析を行う予定である。また、健常対象者の分析結果を用いて、各自己抗体保有状況とライフスタイルや食事摂取状況との関連についても解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス拡大によって出席を予定していた学会が中止となった。このために準備していた費用は次年度の分析費用として繰り越すこととしたい。
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