2018 Fiscal Year Research-status Report
テネイシンCによる脳組織傷害受傷の経過時間推定法の応用に向けて
Project/Area Number |
18K10131
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大津 由紀 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 技術専門職員 (90404342)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳組織傷害受傷時期の推定 / テネイシンC / 頭部外傷 / 組織傷害バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学領域において、内因的もしくは外因的な脳組織損傷の受傷時期を推定することは死因診断の補助として重要である。主に剖検所見やエピソードによって脳組織傷害の受傷時期を推測している機関が大半を占めている現状にある。 本研究は研究代表者が以前、死体血における組織傷害のバイオマーカーである細胞外マトリックス糖蛋白の1つである『テネイシンC(TN-C)』の濃度測定を行って得られた結果の仮説「頭部外傷群のTN-C濃度と死亡までの時間(死戦期)に有意な相関性有り」から検証する。 本研究によってTN-C濃度が「脳組織事例の受傷時期の推定法」の指標として客観的評価ができ、エビデンスに基づいた活用を目的とする。 今年度は症例の背景も含め、直接死因が頭部外傷関連、間接的な死因、直近の頭部外傷の既往歴の症例を抽出作業を行ってコホート分析群を作成している。 なお、現時点でのその分析群についての中毒学的所見、すなわちLC-MS/MSによる薬毒物スクリーニング及び簡易定量、GC-MSによるアルコール濃度測定は概ね順調に進展している。 その他のバイオマーカーの一つとして血清にて現時点はCRP濃度を測定しデータを蓄積している。頭部外傷の症例数が少ないこともあり、今後の方針を検討中である。また、死体血は法医学領域では生体血とは一部同様に数値を扱えないことは知られているので、血清のみのELISA法によるTN-C濃度測定ではなく、他の体液との比率を検討することも視野に入れることとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の当該年度の目的は内因性・外因性の脳組織傷害の症例を対象に、受傷から経日的なTN-C濃度のデータを集積し、以下のような因子から検証して脳組織傷害の受傷時間の推定法を確立することである。 1)法医解剖症例の検証:当講座の法医解剖データベースを用いて、特に頭部外傷等による脳組織傷害を中心に、それらの中毒的所見(アルコール濃度、薬毒物の定性・定量)、病理組織学的所見について予備調査をする。 2)頭部外傷等による脳組織傷害血清及び他の体液中の各種バイオマーカーの測定:主としてTN-C濃度を、必要に応じて他のバイオマーカーの濃度の測定を行う。 上記1)については直接死因が頭部外傷関連の抽出は容易にできるが、間接的な死因、直近の頭部外傷の既往歴の症例を調査するのに予想外に時間を要している。なお、中毒学的所見(LC-MS/MS、GC-MS)の概ね順調に進展している。 上記2)については血清にて現時点はCRP濃度を測定しデータを蓄積している。頭部外傷の症例数が少ないこともあり、今後の方針を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続的に頭部外傷症例の抽出、さらに血清以外の体液中のTN-C濃度にも着眼し、総合的な検証を様々な統計的解析が必要となる。 研究を遂行する上では現時点で症例数の少なさが今後の問題として懸念されるので、頭部外傷モデルラットを作製して同様な研究も視野に入れることも検討する。
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Causes of Carryover |
テネイシンC濃度測定用のELISAキットは高額であり、使用期限があまり長くなく、測定回数を多くするとその分検量線用のウェルを使用することになり効率が悪い。 初年度では思いの外、症例数が少なかったため、ある程度症例数と各種サンプル数を集めて測定する方がいいので、次年度でキットをまとめて購入して少ない回数で各種サンプルを測定するために繰り越した。
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