2021 Fiscal Year Research-status Report
テネイシンCによる脳組織傷害受傷の経過時間推定法の応用に向けて
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18K10131
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大津 由紀 熊本大学, 技術部, 技術専門職員 (90404342)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | テネイシンC / 出血性ショックモデル / 脳組織傷害 / PAI-1 / 免疫組織化学染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、臨床分野で心臓のリモデリングマーカーとして有用である報告されている「テネイシンC」が法医学分野で応用可能かどうかを、本研究者が検証してみると心臓関連死だけではなく、脳組織損傷死でも経日的に有用である傾向があったという成果を報告した。そのため、さらに詳しくテネイシンCと脳組織傷害後の時間経過によってどのように変化していくかを検証することを目的にした研究である。 脳組織傷害受傷の前段で、血栓モデルの経日的変化(損傷の治癒過程を反映)の症例を研究協力者の施設で作製していくことになっていたが、新型コロナウイルスの関係で経日的変化についての続行は断念せざるを得ない状況に陥った。 そこで、令和3年度からは本研究者の支援先で「出血性ショック」モデルラットのショックのタイプ別に分類した、特に脳をはじめとする、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾のパラフィンブロックを作製していき、テネイシンCやPAI-1を中心にHE染色および免疫組織化学染色を施して、「出血性ショック」によってどのような組織学的変化が起きているかを観察し、評価方法の検討を行った。 予備的研究で「出血性ショック」モデルラットのショック条件設定時に作製した病理標本を用いて、テネイシンCとPAI-1(ポリクローナル及びモノクローナル)の各抗体による免疫組織化学染色の至適条件設定を各10種類の検定を行い、プロトコールを作成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度からは、本研究者の支援先でショックのタイプ別「出血性ショック」モデルラットを作製した後に、脳をはじめとする、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓を摘出し、10-15%緩衝ホルマリン溶液にて固定をした。その後、順次にパラフィンブロックを作製していった。 また、薄切を行って、HE染色を施したところ、脳の標本のみ固定不十分が原因と考えられるような所見が明らかとなり、それに伴って免疫組織化学染色には耐えうる標本ではないと明らかになった。 今回の病理標本作製は、摘出した臓器を一度、滅菌生理食塩水で血液を軽く洗い落として、10-15%緩衝ホルマリン溶液に浸漬して12時間液面を揺らしてその後静置をしていた。全臓器とも同じようにしていたので、特に「脳」は摘出して全体像を検鏡したいためホールのまま固定していたが、その段階にメスで割面を入れてから固定する必要があると推察され、今後さらに症例を増やす必要が生じ、継続中である。 一方、「出血性ショック」のラットモデルを作製しながら、予備的研究として、研究協力者が「出血性ショック」モデルの条件設定のために作製していた肝臓と脾臓のパラフィンブロックを薄切し、テネイシンC抗体、PAI-1(ポリクローナル)抗体及びPAI-1(モノクローナル)抗体にて、免疫組織化学染色法の「至適条件設定」の各10種類の検定を行ったところ、PAI-1抗体についてはモノクローナルの方が鮮明に染色されることが確認され、テネイシンC抗体及びPAI-1(モノクローナル)抗体を用いた免疫組織化学染色の各プロトコールを完成させた。
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Strategy for Future Research Activity |
「出血性ショック」モデルラットによって、全身にどのような傷害が起こり、どのような組織学的変化が起きているかを観察し、評価方法の検討を行うことを課題とする。 しかし、本研究者はこれまでは脳を標本対象にしたことがなく、想定外の固定不良が判明したため、今後は摘出後の脳の固定方法を改善し、新たに症例数を増やす必要が出てきた。 本研究者の支援先で作製している「出血性ショック」モデルラットの免疫組織化学染色の症例数を継続して増やしながら集積していく。そして、それらは組織傷害マーカーであるテネイシンCだけではなく、出血性ショックのマーカーにも用いられるPAI-1等、各種免疫組織化学染色を施し、陽性評価のスコアリングを検討していく。
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Causes of Carryover |
本研究は「脳」に焦点を当てた内容であり、研究遂行している際に「脳」のみに想定外の問題が発生し、「脳」以外では代替では結果を補えないために、新たに「出血性ショック」モデルラットの作製及びその病理組織標本作製を追加する必要が終盤に生じた。 有用性等をより正しく評価するために、次年度(令和4年度)に亘って病理標本作製を継続しなければならなく、今年度に使う予定であった予算を停止して、次年度に引き継ぐために生じた。 次年度に追加する標本作製にあたって必要な抗体や試薬類、スライドグラスやカセット等の消耗品に使用する。
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