2018 Fiscal Year Research-status Report
簡便かつ安価で安全に行えるPapainを用いた新しいプランクトン検査法
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18K10132
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
柿崎 英二 宮崎大学, 医学部, 准教授 (70284833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 愛 宮崎大学, 医学部, 助手 (10762122)
新川 慶明 宮崎大学, 医学部, 助教 (40625836)
湯川 修弘 宮崎大学, 医学部, 教授 (30240154)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 法医学 / 溺死の診断 / プランクトン検査 / Papain / タンパク質分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
強酸を用いた従来の珪藻検査は,多くの労力と時間を要し,すべての水中死体に対して実施することは容易ではない.また強酸を用いる場合,酸性ガスの吸引や化学熱傷などの危険も伴う.さらに使用する遠心機や周辺機器に対する金属腐食の影響,ドラフトチャンバーの維持管理など設備面の問題もある.そこで,我々は強酸を用いずに安全かつ簡便・迅速に行える新しい検査方法を開発したいと考えた.これまで我々はQiagen Proteinase K,Buffer ATL及び5N 塩酸を用いて,1 gの肺組織から安全かつ簡便・迅速(3時間以内)に珪藻を単離する方法を提案した.この方法は,肺の簡易迅速診断として効果的であったが,腎臓や肝臓に対しては10 g以上の組織を溶解する必要があるため,主に費用の面で実務利用できなかった.そこで,従来の壊機法や酵素法においても,完全に溶解することのより難しい肝臓を,まず溶解可能な方法とすることを目標に,市販のブタ肝臓を用いて,試薬や条件を検討し決定した.その方法は,まず肝臓10 gをメスで細片し,これを175 mL容V底遠心ボトル(PC製,Thermo Scientific)に入れ,0.5 mg/mL Papain (Roche)加及び5 mg/mL L-Cysteine加10 mM PBS (pH 7)120 mLを加えて50℃,1~1.5時間反応させた.次に,SDSを終濃度2%となるように添加し,50℃,30分間加熱した.液質が透明化したことを確認後,遠心分離を行い(3500 rpm,15 min),上清を除去した.次に,沈渣液を15 mL容コニカル遠沈管(PP製,Nunc)に移し,超純水で2回洗浄後,5 N 塩酸で70℃,20分間加熱した.さらに超純水で1回洗浄後,最後にエタノールで置換し,プレパラートを作成した.さらにこの方法を用いることで,肝臓だけでなく肺や腎臓に対しても,優れた溶解能を示すことが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果から,タンパク質分解酵素として安価なPapainを用いることで容易にブタの組織(肺,腎臓,肝臓)を溶解できることが示された。これによってこれまでの問題点を飛躍的に改善することができ,将来迅速かつ簡便で安全なプランクトン検査法の実施が可能になるものと期待できる。以上のように今後に繋がる十分な進展があったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,Papainと他の溶解法との溶解能や溶解時間の違い,さらに経費等の詳細な比較検討を行い,引き続きPapainを用いたプランクトン検査法の有効性と問題点を明らかにしていきたい.また検査中に起こりうる偽陽性に関しても調査を行い,プランクトン検査における偽陽性の問題について改善を図っていきたい.
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Causes of Carryover |
人手不足により解剖・検査業務等に従事する時間が増え次年度使用が生じたが,その額は9万円以下(全体の8%)であり,これらは次年度に購入が必要となる試薬などの物品費(Papain,Proteinase K,L-Cysteine,SDSなど)の一部にあてる予定である.
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Research Products
(7 results)