2018 Fiscal Year Research-status Report
入浴死の病態解明と死因診断法の開発:各病態モデルによる検討から実務応用に向けて
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18K10133
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 敬人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (40512497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 入浴死 / アクアポリン / 熱ショック蛋白 / 法医学的診断法 / 予防医学 / 死因診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは入浴死の病態解明を目的として研究を進めており,まずは浴槽内溺死を確実に診断する方法の確立を目指している。これまで温水溺死モデルを用いた検討により,温水溺死では肺における水チャネルaquaporin 5 mRNA(aqp5)発現が低下し,熱ショック蛋白HSP70ファミリーに属するhspa5 発現が逆に増加することを報告してきた。今回は,複数の指標に基づく診断法を確立するために,HSP27ファミリーに属するhspb1,HSP90ファミリーに属するhsp90aa/abといった他のHSPファミリーの発現についても検討を加えた。その結果,hspb1発現は温水溺死群で有意に高値を示したが,加温のみの対照群でも未処置(加温・溺水なし)の対照群と比較して有意に高値を示した。一方,hsp90aa/ab発現は,加温のみの対照群では有意な変化がみられず,温水溺死群のみで高値を示した。 そこで次に,動物モデルでの検討で温水溺死診断への有用性の可能性が示されたaqp5,hspa5, hsp90aa/ab発現について,実際の浴槽内溺死剖検例の肺を試料として同様の検討を行った。その結果,aqp5発現は浴槽内溺死(4例),河川内溺死(4例)で対照(4例)と比較して有意に低値を示し,hspa5及びhsp90aa/ab発現はいずれも浴槽内溺死のみで有意に高値を示した。 以上の動物実験,実際の剖検試料を用いた検討の結果からaqp5発現の低下,hspa5及びhsp90aa/ab発現の上昇は,実際の浴槽内溺死例における法医学的診断マーカーとなる可能性が示唆されたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず,温水溺死モデルを用いた検討によって,予想以上に複数の有用な指標が同定された。また,それらについて実際の剖検試料を用いた検討でも同様の結果が得られ,浴槽内溺死の分子生物学的な診断法確立に向けて大きく進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後温度条件を細かく分けて検討することで,剖検例では検討できない湯温との関係を明らかにしたい。また,入浴死の死因の一つと考えられるうっ血性心不全,熱中症の各モデルを作製し,今回有用性が示唆された指標について検討を行うことで,分子生物学的な鑑別診断法を開発したい。
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Research Products
(6 results)