2019 Fiscal Year Research-status Report
入浴死の病態解明と死因診断法の開発:各病態モデルによる検討から実務応用に向けて
Project/Area Number |
18K10133
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 敬人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40512497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 浴室内突然死 / 温水溺死モデル / 温水溺死の診断 / 網羅的解析 / アクアポリン / 熱ショック蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
浴室内突然死(入浴死)はわが国に特に多く社会的問題になっているが、死亡に至る過程は充分解明されていない。今回、温水を吸引して溺死する過程で変動する肺における遺伝子をDNAマイクロアレイによって網羅的に解析した。方法としては、これまでの検討で確立してきた温水溺死マウス(38, 41℃)の各肺から抽出したtotal RNAを試料としてAgilent Array発現解析(タカラバイオ)を行った。各遺伝子発現が対照(頚椎脱臼により安楽死)に対して1.5を上回る、あるいは0.66を下回るものを有意な変動とした。結果、38℃温水溺死では793遺伝子、41℃温水溺死では743遺伝子に有意な変動がみられた。両群で変動がみられた遺伝子を(A)水チャネル/浸透圧受容体群、(B)熱ショック蛋白群、(C)低酸素誘導群に分けて抽出したところ、(A)群はaqp (aquaporin) 2、aqp4、aqp11、trpm1(transient receptor potential cation channel, subfamily M, member1) 、(B)群はfkbp5(FK506 binding protein 5)、hsp90ab1、hspa1l、hspb1、hspb8、(C)群はhif1an(hypoxia-inducible factor1, alpha subunit inhibitor)、egln3(egl-9 family hif3) が同定され、これまで注目していない遺伝子が多数含まれていた。今後、それらの遺伝子についてqRT-PCRにて発現を確認することで、複数の指標に基づく温水溺死の分子生物学的診断法の確立を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
DNAマイクロアレイ解析によって温水溺死モデルで変動する遺伝子を網羅的に解析し、これまで注目してこなかった複数の遺伝子候補を見出すことができたため、入浴死の鑑別診断方法の確立に向けて大きく前進できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討で挙げられた候補遺伝子に対してqRT-PCRにて発現を検討し、有意な発現変化がみられたものを組み合わせて温水溺死モデルにおける分子生物学的診断方法を確立し、最終的には実際の剖検試料において検証を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は前年度までの予算で実験結果を解析することで十分な成果が得られたため、新たな消耗品費などに費用がかからなかった。また、令和元年度の後半は新型コロナウィルス感染予防のため大学から休業要請があり、不要不急の実験を行うことが出来なかったため。次年度に繰り越した予算は今年度に実施予定であった実験を行うための消耗品費に用いる予定である。
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Research Products
(1 results)