2020 Fiscal Year Research-status Report
入浴死の病態解明と死因診断法の開発:各病態モデルによる検討から実務応用に向けて
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18K10133
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 敬人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40512497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浴室内突然死 / 温水溺死モデル / DNAマイクロアレイ / 網羅的解析 / アクアポリン / 熱ショック蛋白 / 法医分子生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
浴室内突然死(入浴死)はわが国において深刻な社会的問題となっているが,法医解剖が実施される例が少なく,死亡に至る正確な病態生理学的機序は充分に解明されているとはいえない。われわれは昨年度までにマウス温水溺死モデルを用いた動物実験において,温水を吸引して溺死する過程で肺において変動する遺伝子をDNAマイクロアレイによって網羅的に解析し,水チャネル/浸透圧受容体群,熱ショック蛋白群,低酸素誘導群にそれぞれ分類される複数の候補遺伝子を同定することに成功した。今年度はDNAマイクロアレイによって同定された各候補遺伝子についてqRT-PCR法を用いて,各遺伝子発現を確認したところ,aqp5,hsp90ab1,hspb1についてはDNAマイクロアレイと同様の発現変化がみられた。ただし,それらのうちhspb1については,加温のみの対照群(加温後に頚椎脱臼にて安楽死させた群)でも有意な発現増加がみられた。したがって,肺におけるaqp5及びhsp90ab1発現を指標とすることで温水溺死の分子生物学的診断が可能であり,入浴死の病態解明につながる成果と考えられた。なお,今年度はさらに実際の入浴死法医解剖例の肺試料を用いて,上記指標の発現を検討する予定であったが,適切な試料を得ることができず検討できていない。しかしながら,補助事業期間の延長申請が認められたため,上記検討内容については令和3年度に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で記載したように,適切な剖検試料を収集することができず,検討できなかった。新型コロナウィルス感染症流行の影響で解剖率が低下していることも原因の一つと考える。令和3年度4月から本県の解剖率が増加しているため,補助事業期間の延長によって,令和3年度は検討できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験で得られた結果を基に,実際の剖検試料でも同様の検討を行うことで,浴室内突然死の病態解明につながる温水溺死の法医分子生物学的診断方法の確立を目指したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症流行の影響で法医解剖の解剖率が低下し,入浴死剖検例の適切な試料を得ることができず,予定していた検討を行うことができなかったため消耗品費用が余ってきた。延長申請が認められたため,余剰金を用いて令和3年度には検討を実施する予定であり,消耗品の購入や研究成果をまとめた論文の英文校閲費用,雑誌の投稿費用及び印刷費用に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)