2019 Fiscal Year Research-status Report
看護系研究における研究倫理指針の構築──フィンランドをモデルとした国際比較
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18K10167
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長沼 淳 順天堂大学, 保健看護学部, 先任准教授 (90424233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 佳子 順天堂大学, 保健看護学部, 講師 (20637102)
酒井 太一 順天堂大学, 保健看護学部, 准教授 (50363734)
山下 巌 順天堂大学, 保健看護学部, 教授 (70442233)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 看護研究倫理 / フィンランドの態勢 / 倫理教育 / 自律性の涵養 / 自己決定能力育成支援 / 就学前教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に小学校、大学の教育システムにおける自律性を涵養するためのカリキュラムならびに研究者としての研究の倫理性確保の意識を醸成させるカリキュラムに関する現地調査を行い、帰国後、調査内容について共同研究者と精査を行った。そこで明らかになったことは、小学校入学前から子どもたちに自律性を身につけさせる教育が実施されていること、また大学入学前の高等学校の教育においても生徒の主体性、自律性を基本に据えた授業形態の存在が示唆された。その中で、主体的に行動できるようにさせるカリキュラムが、保育園→小・中学校→高等学校→大学と相互に緊密に連携して展開されていることが明らかとなった。そのため、フィンランドにおける保育園、高等学校における教育システムについての調査を開始し、現地や国内でフィンランドの教育に詳しい方からお話を伺ったところ、現地で追加調査が必要であると判断するに至った。共同研究者と調査内容を吟味した上で、現地コーディネーターと相談し、ヘルシンキ市郊外のエスポー市とカウニアイネン市の保育園、高等学校、ヘルシンキ市内の保育園博物館を訪問、調査を実施した。保育園では多様な人種、宗教的背景など文化的多様性をふまえつつ、フィンランドで生活するための基本的な素養を身につけさせる方針を、保育園長の説明、案内により確認することができた。後日訪問した保育園博物館の展示においても、19世紀より、フィンランド人の幼児に対する方針も同様であり、フィンランドの保育園が伝統的に現在のような運営を行ってきたことを確認した。高等学校においては、受動的な講義と能動的な調査学習、またその考え方に則した大学受験制度についての説明、案内を校長にしていただいた。実際に見学した歴史の授業では、知識注入型の教育とそれをもとにした生徒主体の調査学習を組み合わせて生徒の主体性を伸ばす教育の実際を直に確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度、2019年度とフィンランドの保育園から大学訪問し、現地調査を行った。現在、その調査内容の分析を行っており、今年度中には中間報告としていずれかの学会で発表する予定である。 具体的には、大学、ならびに大学院における研究者に対する倫理教育は本邦で実施されているものと比較して、とりわけ突出した高度なものとはいえないが、独自性も存在する。保育園では、幼児の段階から自律性の涵養、自己決定を促す関わりが積極的に行われていることが明らかになった。小学校、高等学校においても、自律性を育てるために成績上位の児童、生徒のみならず下位の子どもたちに対する関わり方を工夫しながら成長を促す実態が明らかになった。幼児段階から大学生、若手研究者に至るまで個人の自律に対する一貫した戦略をもって自立した市民を育成する状況は本研究の主題に対しても大きな示唆を与えたと考える。本調査の内容をさらに精査し、そこで得られた知見をまとめている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、この研究の最終年度に当たる。過去2年間の調査内容の分析を行い、報告の内容に合わせた学会発表の機会を複数模索しているところである。フィンランドの実態調査では、単純に大学や大学院、研究組織内の対応だけで、研究者の自律性を醸成しているわけではないことが明らかになった。われわれは本研究と並行して看護系大学の倫理委員会を対象とした実態調査を行っており、その分析もまとまりつつある。我が国における看護系大学の倫理審査の方向性を、フィンランドの状況とどのように整合性を保ちながら、我が国の研究者の自律性を基盤に置いた研究倫理方法の確立に向けた方策を提案できるか、さらに検討しまとめていくことを予定している。最終的に具体的な報告ができるところまで計画を進めていく計画である。 ただし、昨今の時勢を考慮すると、予定していた発表が行えない可能性もある。そのため、さらに共同研究者が所属する複数の学会などにも視野を広げ発表の場を見つけていこうと考えている。
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Causes of Carryover |
フィンランドへの現地調査を行った後の分析において、資料の取り扱いに共同研究者と解釈の相違が出てくることとなり、より妥当な共通了解がえられるようさらに分析を深化させていくこととした。また並行して行っている研究成果の取り扱いをめぐって、両者の整合性を取り、本研究の分析、まとめに際して、総合的に議論を展開させていくことによって、より充実した成果が期待されると共通了解が得られた。昨年度予定していた、学会等での発表を今年度に持ち越すことで、より精度の高い成果を生み出す計画に修正したことが、予算の消化に変更が生じた主要な理由である。 今年度に持ち越した調査結果の分析、まとめ、発表において、繰り越した予算を用いて、計画の完全な実施を計画し、遂行していく予定である。
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Research Products
(5 results)