2020 Fiscal Year Research-status Report
Florence Nightingaleの著作におけるクリミア戦争の影響
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18K10178
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Research Institution | Kobe Tokiwa University |
Principal Investigator |
山崎 麻由美 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (00530304)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Florence Nightingale / クリミア戦争 / 看護 |
Outline of Annual Research Achievements |
クリミア戦争時の野戦病院の実態を従軍医や視察に訪れた者達の記録から調べた。どの著作にも記録されていたのは、問題となっていたのは衛生面の酷さと傷病兵へのケアが行き届かないことであった。そしてその2点はNightingale自身が挙げていた問題点と一致する。 クリミア戦争中のNightingaleの経験が、後の著作に与えた影響を調べるため、1858年版の『病院覚え書』の内容と戦地での実態を比較した。この『病院覚え書』は、その後改訂された版にはない特徴がある。クリミアでの経験が事細かく述べられ、彼女の意味する「病院」は野戦病院を指していたという点である。そしてNightingaleが病院構造や運用のSystem構築を語る時の視点はnurseがいかに業務にあたりやすいかということであった。また「女性は(中略)清潔さ整理整頓のスキルにおいて男性より優れている」という論を展開している一方で、看護兵(orderly)の存在から男性看護師の可能性にも触れるなど、戦時ならではの看護の視点を得たと考えられる。 野戦病院の入院の原因は赤痢等による病気の場合もあったが、Nightingaleは『病院覚え書』で衛生面の改善があれば病気で亡くなることは防げたはずだと述べている。さらに1862年に著した『陸軍衛生管理と改革』では、予防が大切だったと明言している。この著作の最後はクリミアでの経験が公衆衛生に活かされることを願う言葉で締めくくられている。このようにNightingaleは戦時の看護で経験したことを平時の看護へと活かし発展させていったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度はコロナ感染症蔓延により、学校業務形態が大きく変わった。その対応のため、研究に遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに収集した資料を整理し、Nightingaleがクリミア戦争で経験したことが、終戦後に著した3冊の著作『女性による陸軍病院の看護』(1858年)、『病院覚え書』(1858年版から1863年版まで)、『看護覚書』(1860年)にどのような影響を及ぼしているかを明らかにしていく予定である。
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