2019 Fiscal Year Research-status Report
多死時代の「生き方・生き場所」を支える家族調整スキル開発とICTを用いた普及
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18K10186
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柳原 清子 金沢大学, 保健学系, 准教授 (70269455)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 終末期意識フィールド調査 / 全住民意識アンケート / 家族構成とサポート / 看護職研修 / 家族関係調整スキル研修の組織化 / 家族看護:解決志向型モデル / 研修効果 / ICT研修の企画 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の目的は(1) 終末期に願う場で住みつづけられるのかのフィールド調査:H市のKDB(国保データベース)および全住民アンケートを用いて、人生の終末期をどこで過ごしたいと考えているかの認識、地域のソーシャルキャピタルを調査する。(2)解決志向型家族調整モデル(「渡辺式」家族アセスメント/支援モデル)を用いて、看護職の調整スキルの育成をはかることだった。 (1)H市の40歳以上の全住民調査から、終末期の意識とその考えに家族状況やソーシャル・キャピタルがどのように関連しているか明らかにした。対象者は6,578人(回収率43.9%)であり、終末期を過ごす場としての「自宅」と「それ以外」のロジスティック回帰分析を行った。結果、終末期の場の認識に、男性は自宅を、女性は医療機関や施設希望であった。また家族構成では「一人暮らし」が有意に「自宅以外」を希望し、15分圏内に住む子どもやきょうだいの有無、親族ネットワークおよび市内11圏域のソーシャル・キャピタルは関連しなかった。結果はH市の地域包括ケア施策の基礎資料にしてもらった。 (2)看護師の家族調整スキルを上げるための研修として、解決志向型家族調整モデルのシート(「渡辺式」家族関係分析シート)を用いての事例検討会および研修・講習会を本格的に開始した。まず全国に「渡辺式」家族看護研究会を8支部立ち上げ、看護職を対象として年10回~4回程度の事例検討会を開催した(1回の参加者は20名~50名)。また事例検討のファシリテーター養成のための講習会として、「事例検討マスター研修」「事例検討プレマスター研修」も行い、延べ500~800人の看護職に研修を行った。研修効果測定はアンケートで実施した。今後データ分析を行う。 一方で、これらの研究会と研修会は、2020年1月より、新型コロナウイルス感染対策のため、軒並み中止にせざるを得ない事態となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の目的とした(1) 終末期に願う場で住みつづけられるのかのフィールド調査は予定通り実施でき、一部は論文化までこぎつけた。(2)看護職の調整スキルの育成をはかる方略として、当初、ICTを使った広報=ホームページの立ち上げを行い、そこからのクラウドを使って、事例検討を積み上げる計画を立てた。 一方で「渡辺式」事例検討会の受講者たちから自主的に、「家族看護研究会を実施して、身近な仲間と事例検討をしていきたい」との要望が多く出て、結果的に全国に8支部が立ち上がった。こうして組織化が急速に進み、研究計画が大幅に広がりを見せた。この事例検討のためのファシリテーター養成講習会も軌道に乗せることができた。当初のアプリ・クラウドを使った事例の積み重ね(個人への研修)から、組織的な研修(集団コンサルテーション)へと拡大し、この時点では計画以上の進展と評価された。 しかし、新型コロナウイルス感染の出来事で、研究会および研修会がすべて中止となり、看護職の調整スキルの育成のための教育研修は大幅にダウンとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、終末期の意思決定(ACT=人生会議)のための家族調整がスムーズに行えるように、援助職が家族調整スキルを身につけて実施できるよう、ICTを用いた普及を図ることであった。 そのため、当初は事例分析のアプリをオンラインにのせるクラウドシステムを作成することを計画したが、2年目にスキル向上の方略として、事例検討会という集団コンサルテーションを実施していくことが効果的であることがわかり、研究会を立ち上げ集団で研修会と行っていくという方向に転換をはかった。3年目はこの効果について整理し、論文化をはかる。さらに、新型コロナウイルス感染の影響で、対面式の研究会/研修会が無理となったので、Web会議形式の事例検討会/研修会を開催していく計画とし、その効果測定を行う。 3年目の全体的な推進方策は、①多死時代の「生き方・生き場所」を考える論文の執筆、②多死時代の「生き方・生き場所」を考える上での、本人・家族の意思決定(ACP)を支援する家族看護の論文執筆、③地域包括ケアシステムとして、多死時代の「生き方・生き場所」を支えるための論文の執筆、④看護師の家族調整スキルアップのための研修効果をまとめる、⑤新型コロナウイルス時代の看護師研修=Web会議形式の事例検討会/研修会の開催を行い、その効果測定と論文化および学会等での公表、の以上5点を実施していく。
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Causes of Carryover |
アプリ開発等のICT関連経費が、計画変更のため、未使用となった。また学会参加のための旅費および英文翻訳料金が回数減少のため、未使用分が生じた。 3年目(最終年)は、論文投稿および学会で成果を発表していく予定であり、旅費および英文翻訳料に使用予定である。またWeb会議システムを使用しての研修計画を立てているため、その関連諸経費として使用予定である。
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Research Products
(20 results)