2019 Fiscal Year Research-status Report
皮膚バリア機能と皮膚知覚との関係から考える効果的なスキンケアの検討
Project/Area Number |
18K10233
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐伯 由香 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (70211927)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 皮膚バリア機能 / 経表皮水分蒸散量 / 知覚閾値 / 痛覚閾値 / 知覚過敏 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はラウリル酸ナトリウム溶液(SLS)を前腕手掌側に閉塞的に貼用して皮膚刺激を行った。SLSは先行研究から、1%、2%、5%、10%溶液を前腕手掌部に24時間貼付した。刺激前のTEWLは5.2~8.1g/m2/hであったが、除去直後からすべての濃度においてTEWLは上昇した。特に5%と10%濃度では24時間後でもそれぞれ23.8 g/m2/h(5%)と22.1 g/m2/h(10%)と高値を示した。TEWLを<10(以下<10)、10~20未満(以下10-20)、≧20 g/m2/h(以下≧20)の3群に分け、知覚・痛覚閾値との関係を分析した。TEWLが<10の知覚閾値は14.0±3.0μA、10~20では10.2±3.3μA、≧20では7.0±2.3μAと、TEWLが高くなるにしたがって、知覚閾値は有意に減少した。また、痛覚閾値も、48.5.0±12.2μA(<10)、35.2±10.6μA(10~20)、18.9±5.2μA(≧20)とTEWLが上昇すると有意な低下がみられた。このことは、皮膚のバリア機能が低下すると知覚に敏感になり、少しの刺激でも痛みを感じてしまうことを示している。角層水分量はTEWLが<10のとき28.1±5.8μsであったが、10以上になると18.5±8.0μs(10-20)と18.7±8.8μs(≧20)と有意に減少するもののTEWLの違いによる相違は見られなかった。 今回の結果から、SLSによって人工的に皮膚を刺激してTEWLが上昇することによって、知覚過敏が起こっていることが明らかとなった。昨年度の医療用粘着テープを用いた場合は、TEWLは上昇しても知覚・痛覚閾値には影響がほとんどなかった。昨年と今回との違いは角層水分量で、角層水分量の減少も皮膚バリア機能の低下とともに知覚過敏に関与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本大学看護学専攻では博士課程を設置するべく、準備を進めてきた。文科省からアドバイスをいただきながら提出書類の準備・修正を行うのに時間が取られた。また、今年度から本大学の総合健康センター長を兼任しており、2019年8月に第49回中国四国保健管理研究集会を本大学が当番校として開催した。その準備、運営、残務処理があったため、研究時間の確保ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
経表皮水分蒸散量と知覚・痛覚との関係をさらに検討する。また、臨床でよく使用されている医療用粘着テープやドレッシングを使用した時の状態と比較検討する。さらに、皮膚バリア機能が低下したときに皮膚保護剤を使用した場合、知覚・痛覚にどのような影響があるか検討する。
|
Causes of Carryover |
昨年度測定機器や多くの物品を購入したので、今年度はそれらを使用することで測定ができた。今年度は試薬のみの購入だったためにこのように次年度使用額が生じた。次年度は成果を発表するため、旅費や論文の投稿料に充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)