2019 Fiscal Year Research-status Report
精神分野における地域包括ケアに従事する看護師の対話を重視した教育の方法と検証
Project/Area Number |
18K10289
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
末安 民生 岩手医科大学, 看護学部, 教授 (70276872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西池 絵衣子 兵庫県立大学, 看護学部, 講師 (90559527)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 精神看護 / 臨床教育 / 対話 / 早期介入 / リフレクティングプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の意義は、精神科分野における地域包括ケアに従事しようとする看護師に対しての医療従事者間の対話を重視した早期介入のための教育方法を開発し、検証することである。 研究対象施設を2か所設定し、月に1回のペースで臨床状況を設定した場面に沿って対話実践場面を試行し、そのつどフィードバックのレビューを実施した。1施設目の調査結果としては、研究参加者は13名(精神科経験年数6か月~29年)であった。研究協力者は臨床現場において「新たな会話が展開していく可能性をひらいていくよう努める」対話や「家族(役)と専門家(役)がそれぞれに会話し、互いを観察し、逆転して観察される側の立場をくり返して内的対話として受け止めていく」いうリフレクティングプロセス(以下、RP)にはなかなか慣れていくことは難しかった。しかし、回数を重ねるごとに臨床場面の再現を通してそれぞれの立場に思いを馳せる再体験を経験し、実際のケアの場面を振り返り始めた場面も見られた。対話とは、参加者が新しい方向を感じ考えるためのものであり「用意した答え」ではない「望ましい変化」を生み出すための方法である。研究参加者からは、「面談は患者、家族の話を聞く場だが、ある程度方向性を定めてその方向に誘導してしまう」ことが臨床の日常的な対応である。これを変更していくことは画期的だが困難でもあると指摘がなされた。そのため繰り返しのトレーニングは必要であり、期間を設けて実施する必要性は意識の変化を認識するのに適している。だが、これまでの経験知を変容させるためRPのトレーニング自体を安心した場で実施することが必要であり、RPの体験が臨床場面で効果的に取り組めるような活用方法も具体的に考える機会が必要であるという指摘がなされた。第2調査施設での検証を踏まえつつ、地域包括ケアの展開を意識したRPの活用を継続的に取り組むことに意義があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象施設の2施設のうち1施設は予定通りに終了し、その施設の沿革、概要などを加味しながら暫定的な分析を行っている。第2研究対象施設の調査対象者は16名で第4回目までの調査が終了した。その時点で、新型コロナウィルスの影響が拡大したため、研究対象施設との協議を行った。第2研究対象施設の病院への外来者の立ち入り制限が実施されたため3月より調査を中断している。現在、社会情勢をみながら再開に向けての連絡と協議を絶やさないようにしている。 第2研究対象施設においても調査方法であるRPトレーニングと前後の情報収集などのプログラム全体の実施は順調に進んでいる。第1研究対象施設の暫定的な調査結果、分析との比較も部分的に行いながら、結論に至る情報の分析と統合、報告の前段階の結果の分類などを研究員間で行っている。 現在、調査の再開時期の見通しは立っていない。すでに調査機関の予定は終了している段階の日程ではあるが、計画の変更を最小限にとどめ第1研究対象施設との比較分析が順当に実施できるように準備を行っている。研究再開後も月1回の調査期間のパターンを変更することは望ましくないと考えているが、研究期間内での調査結果、分析が得られない事態になれば日程だけではなく研究方法の部分修正、介入的な調査の部分には見当が必要になる可能性がある。研究報告の提出締め切り期日を見ながらできるだけ計画に沿って実施、評価ができるように状況判断をしたいと考えている。また、最終結果についてのフィンランドでの実施機関との分析に反映させたい最新知見の習得とスーパーバイズおよび今後の展開についての意見交換は、Web開催の限界を考慮しながらも検討したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最終的に研究対象の2施設間での結果を比較しつつ分析し、看護師個人の資質と提供技術の変化、看護師同士の相互関係、医療チームにおける看護師の状況判断や介入方法などの変化、RPの院内看護教育システムへの反映の可能性などについて分析と検証結果を検討する。2施設とはいえ総計30人のキャリアの違いのある看護師のRPの体験と所属研究対象施設間での施設の概要の相違などを勘案するため、提供しているサービスの沿革などもとらえながら医療理念を反映したスタッフ教育とシステム構築の可能性を検討したい。研究テーマである地域包括ケアの展開時に看護師の能力が生かされるような視点と方法をRPの機能を活かして実施していける学習環境の風土つくりなども含めて検討していきたい。研究結果の分析に当たっては、研究結果について研究者と研究対象者がどのように相互関係を展開しながら相補的に参加して学習することができたのか、教育プログラム実施中の具体的な場面の展開の分析などを通して、現在の現任教育方法の見直しに寄与できる方向性も検討課題としたい。研究場面では事例の展開を通しながら看護師自身の日常ケアの姿勢、患者、家族とのかかわりを振り返る機会にもなっていた。臨床での活用に向けて研究対象者の活発な討論がみられていたことは2施設ともに共通していたため、精神科看護師がRPの学習を通して対話を用いた介入の精度は高められ、ケアの質の向上につながることが推察される。教育方法の洗練化は調査の進行中にも提案できる可能性があると考えられた。そのためにも現在、中断している調査を、期間内に終了するために遠隔による支援の方法に関しても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究対象施設が想定よりも遠隔地になり、同時に研究分担者の所属機関が変更したことに伴い、旅費の割合が増えた。また、分析に反映させたい最新の知見の習得とスーパーバイズをえるために訪問の予定であったフィンランドに訪問調査は、先方との日程調整が困難になったため次年度に繰り越すことになった。今年度の実施は世界的な情勢の変化もあり断念せざるを得ない可能性があるが、検証の精度を高めるために施設訪問の確認調査費用が必要となることが考えられる。また、報告書作成にあたっての地域包括ケアの最新地検の習得などスーパーバイザーに対する謝金、報告書の作成などに使用する予定もある。実地調査が困難な場合は、遠隔での対話調査も含めて検討していくため、そのための諸費用に充当する予定である。
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