2019 Fiscal Year Research-status Report
重度の精神障がい者への多職種アウトリーチ支援における現象学的研究
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18K10329
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Research Institution | 福井医療大学 |
Principal Investigator |
近田 真美子 福井医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00453283)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ACT / 精神看護 / 現象学的研究 / 地域精神保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度の精神障がい者への多職種アウトリーチを実践しているスタッフらにインタビューを実施した。看護師へのインタビューは、分析を行い、第18回日本看護技術学会において発表した(看護師Cさんの実践の構造ー重度の精神障がい者への多職種アウトリーチ支援における現象学的研究)。結果は以下である。
自らの看護を「実験」と表現するCさんの実践は、精神症状が強く接触することすら難しい利用者に対して、家族から、植物が好きだという情報を入手しては、椎茸の原木を購入し本人の視界に入る場所に設置し一緒に育てることで関係性を育むなど「安心」という感覚を重視しながら距離を縮めていく内容であった。Cさんは、幻聴や妄想がある利用者の「この世界」の意味内容は理解できないが、孤独や寂しさといったネガティブな感情が存在しており、それを能動的に捕まえようとしていた。そして「心配」と対比関係にある「安心」という「人として当たり前」の感覚を第一優先に据え、利用者の興味・関心に焦点をあてながら「実験」や「工夫」を凝らした実践を展開していた。この「人として当たり前」の感覚がCさんの実践の基盤となり、医療制度の規範や枠組みを変容させるような実践へと繋がっていた。その過程を経て、目標設定の思考は消失し、代わりに「待つ」行為が重要な価値をもつようになった。こうした実践を経て「孤独」だった利用者はCさんと「一緒」に苦楽を享受することで現実世界への信頼を得て、希望や意志といった「人として当たり前」の「ニーズ」を表出できるよう回復を遂げていった。
また、イタリアの地域精神医療に携わる専門職へのインタビュー結果を踏まえて、日本における精神看護実践を考えるためのワークショップを国内の学会で開催したり、実践における主要なキーワードについて、イタリアと日本の精神保健医療従事者、当事者らと対話する場を設けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に予定していた対象者へのインタビューを終えることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
対象者へのインタビューならびに分析、結果の公表を引き続き行っていく。 イタリアの地域精神医療に携わる専門職との交流については、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、計画変更が余儀なくされており、今後の状況を見ながら、再度、計画する。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた物品費の購入が遅れたため。
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