2020 Fiscal Year Research-status Report
クローン病患者のセルフマネジメントの実態と関連する要因
Project/Area Number |
18K10354
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
石橋 千夏 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30564976)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藪下 八重 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (60290483)
籏持 知恵子 大阪府立大学, 看護学研究科, 教授 (70279917)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | クローン病 / セルフマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
セルフマネジメントとは、Lorig(2006)によると「慢性疾患を持ちながらも可能な限り身体の機能を引き出し人生の喜びを最大限に実現するために、その疾患が引き起こす身体上・精神上の課題に取り組むこと」とされ、Millerら(2015)はそれが「病状の変化に合わせた」流動的で反復的なプロセスであると指摘している。 本研究は、これらセルフマネジメントの定義をもとに、クローン病患者のセルフマネジメントの実態と関連要因を明らかにすることを目的とし、尺度開発と当事者を対象とした調査を行うものである。2020年度は、2019年度に作成した尺度原案の結果に基づき、尺度の表面妥当性・内容妥当性を検討し、因子分析等による構成概念妥当性、基準関連妥当性などの検証を行う予定であった。しかしながら、概念分析と対象者からのインタビュー結果に基づくセルフマネジメントの内容の整合性や特徴を再検討する必要性が生じた。 その結果、クローン病患者のセルフマネジメントは【身体感覚を活かした病状変化の察知にもとづき、その都度対処する】や【個別の療養法を確立する】など7つの概念で構成された。クローン病患者のセルフマネジメントは、病状が短期間に急激に変化する可能性があり、受診時の検査結果等だけでなく患者自身の身体感覚や経験知を活かしたモニタリングで常に対処するというプロセスを繰り返していることが特徴的である。対処には療養法だけでなく治療の調整も必要となる。クローン病は他の慢性疾患に比べ病状や治療の個別性が非常に高度であるとことや、セルフマネジメントの流動性から医療者に体調の変化や生活状況など判断に必要な情報を的確に伝える重要性も特徴的と言える。これらは既存の尺度には含まれないクローン病患者のセルフマネジメントの特徴であることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
尺度項目をクローン病患者のセルフマネジメントの特徴を考察して見直し、信頼性・妥当性の検討に進む予定であった。しかし概念分析と対象者からのインタビュー結果に基づくセルフマネジメントの内容の整合性や特徴を再検討する必要性が生じた。 またクローン病は自己免疫疾患であり、患者の多くが生物学的製剤や免疫調整薬、ステロイド薬を日常的に治療に用いている。今年度もたらされた新型コロナウィルス感染症はクローン病患者にとって脅威であり、患者の中には通学や通勤の免除を小中高校や勤務先と交渉する必要があるほどであった。そのため尺度項目の妥当性を当事者に確認してもらう調査は調整が難航した。また、専門家も新型コロナウィルス感染症患者を引き受けている医療機関に関係する医療者が多く、予定の調査が行えなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、尺度の表面妥当性・内容妥当性の検討を行い、尺度項目を精選する。精選した項目を用いてクローン病患者500人程度に調査し、尺度の信頼性・妥当性を検討、クローン病患者のセルフマネジメント評価尺度を完成させる。また、この評価尺度を用いてクローン病患者のセルフマネジメントの実態を明らかにし、関連要因についても併せて調査する。本研究は今年度も新型コロナウィルス感染症の蔓延状況に影響を受ける可能性があるため、研究協力者との調整手段について、オンラインなども検討する。
|
Causes of Carryover |
2020年度実施できなかった調査に関して使用する。クローン病患者のセルフマネジメント評価尺度の表面妥当性・内容妥当性の検討のため、クローン病当事者を対象とした調査およびクローン病患者の看護の専門家を対象とした調査を予定していたが、covid-19の感染拡大の影響により実際の調査は持ち越しとなったため、2021年度に使用する。 また2020年度分の助成金を用いて、全国の炎症性腸疾患センターを有する医療機関などで、クローン病患者500人程度を対象に尺度の信頼性・妥当性を検討する調査、クローン病患者のセルフマネジメントの実態調査、クローン病患者のセルフマネジメントの関連要因についての調査を行う。その調整、調査実施、結果集計、分析、成果発表などに助成金を使用する予定である。
|