2020 Fiscal Year Research-status Report
父親の発達特性を踏まえた産後うつ病支援・予防プログラムの開発
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18K10399
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Research Institution | Kagawa Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
木戸 久美子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (40269080)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 仕事のストレス / パートナーとの関係 / EPDS / 男性のうつ症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
父親の産後うつ病の実態を把握するため、妊娠後期から産後1年にかけてのパートナーをもつ男性を対象として、合計5回の全国Webベースの縦断調査を実施した。対象者数は1回目:妊娠後期(32~40週)494人,2回目:産後0~2か月388人,3回目:産後3~5か 月352人,4回目:産後6~8か月300人,5回目:産後10~12か月224人である。 質問項目は、仕事のストレス、パートナーとの関係、赤ちゃんへ の気持ち質問紙等、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)等を設定し、回答を依頼した。統計解析に はEZRを用い、有意確率は5%とした。対象者の赤ちゃんへの気持ち質問票の中央値は、1年間を通して4~5点で推移していた。EPDS値の中央値は、6~8点で推移し、男性におけるEPDS値のカットオフ値を8点とする研究もあることから、本研究対象者は全体的にEPDS値が高い可能性を認めた。 本邦における父親のEPDS値は、妊娠後期が最も高くなっていたが、母親において報告されているEPDS値の変化では、産後のEPDS値が上昇するとの報告もあり、母親のEPDS値の変化とは異なる可能性がある。しかし、 EPDSは産後の母親を対象として開発された尺度であり、男性の抑うつ症状は女性とは異なることも報告されていることから、男性の産後うつ病のスクリーニング尺度としての利用には項目内容の修正などの検討が必要かと思われた。また、父親は、仕事のストレスの高まりやパートナーとの関係悪化が精神面の健康に影響を受けることも考えられる。また、これらは、コミュニケーションを苦手とすることに起因している可能性がある。本研究対象には産休や育休 をとっている父親がいないことから、父親の「産後うつ病」は、育児そのもの に対する不安や負担などが影響している母親の「産後うつ病」の背景とは大きく異なるのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国Webベースでの1年間の縦断調査を終了できた。しかし、Webベース調査で、EPDS値が高い傾向を認めた地域(中国地方)における医療機関での調査はまだ終了していない。予定していたWebベース縦断調査を終了できていることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
全国Webベース調査で、EPDS値が高い傾向を認めた中国地方における病院受診中の妊婦の夫で、産後うつ病調査を企画し実施しているところである。今年は、この調査において、妊娠後期および産後1年間までの父親のうつ状態について実態を把握する予定である。また、父親の抑うつの背景にあるパートナーとの関係悪化や仕事のストレスがの高まりが、コミュニケーションを苦手とする性格に起因している可能性がうかがえたので、発達特性に着目した父親を対象としたインタビューを行うことを企画しており、その際に、EPDSとPHQ-9を用いた精神面の健康度のアセスメントを実施する予定である。また、質問紙調査では把握できなかった父親の産後うつ病の支援needsの把握や、支援の方向性を模索するための基礎資料を得ることを考えている。この父親インタビューは、今年度から次年度にかけて実施する予定である。
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Causes of Carryover |
全国Webベースの調査のみで、謝金の発生を伴わなかったことや、COVID-19感染拡大により学会等がWeb開催のみになり旅費の支出がなかったことため、残額が予定より多くなった。
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