2019 Fiscal Year Research-status Report
現代学生のヘルスリテラシーと健康リスク認知特性に関する探索的研究
Project/Area Number |
18K10424
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
武田 龍一郎 宮崎大学, 安全衛生保健センター, 教授 (90336298)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ヘルスリテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヘルスリテラシーと健康リスク認知特性を主題とし、主に保健サービスの利用者(主に学生を想定)と保健サービス提供者である医療者との効果的なヘルスコミュニケーション方略に資する知見を得ることを目的とした、一連の探索的研究である。 令和元年度末までに合計163名の大学生(うち女性72名)のアンケートを回収することが出来た。その結果、European Health Literacy Survey Questionnaire (HLS-EU-Q47)日本語版を用いたヘルスリテラシーの包括的評価(調査I)では、国内の一般の日本人を対象に行われた先行研究結果(25.3点。50点満点で高い方が高水準。)に対して、大学生平均は27.0点と、2ポイント弱高い結果であった。また昨年行った医療従事者への調査と比較すると、看護師平均(28.5点)よりも2ポイント弱低かった。このことは、本研究に参加した大学生のヘルスリテラシー水準が、一般の日本人より高く、医療従事者(看護師)よりも低いことを示唆している。一方、諸外国における主に保健サービスの利用者ないし一般住民を対象とする先行研究結果と比べると、本研究における学生も医療従事者(看護師)も、先行研究の日本人平均と同様に、かなり低い数値(例;ヨーロッパ連合諸国は総じて30点以上)であった。 また健康リスク認知特性に関する調査(調査II、調査III)については、まだケース数が充分でなく解析途上であるが、傾向として特徴的なヒューリスティック認知方略が窺われている。これらの成果について、学会等で発表予定であったが、新規感染症のパンデミックの状況で、学会の中止等の影響を受けている。次年度以降に順次学会や論文投稿の形で発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度末までの研究期間2年間に、140名の医療従事者と163名の大学生への調査を行った。これは研究期間全体(平成30-令和3年度)でのケース目標数合計(学生480名、医療従事者180名)の約半数に相当する。この点では比較的に予定通りの進捗である。 一方で、令和元年度終盤で、新規感染症が発生して全世界的な流行に至り、研究参加者の募集状況や、学会発表予定等の研究計画に少なからず影響が生じている。総合的に思料して進捗は「やや遅れている」と判断した。次年度以降に進捗の後れを取り戻すべく、次項の推進方策により創意工夫して取り組む。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が所属する保健管理部門(いわゆる保健管理センター)では、学生健診の事後フォローアップや健康相談、身体疾患の応急手当、またその他の相談(カウンセリング等)を合計すると、例年であれば年間のべ3000件余の利用があるが、昨冬以降の新規感染症の世界的流行を受けて、現在は大学での活動は主に遠隔授業等で行われ、大学キャンパスは原則閉鎖されており、研究参加の説明や質疑が対面では難しく、研究参加者の募集が事実上停止している。このことが最大の課題である。従って、今後の新規感染症の流行状況が沈静化して、概ね社会情勢が流行以前に近い日常生活に復帰次第、研究参加募集を再開する。 研究参加募集の推進に際しては、本研究内容が奇しくも感染症等の疾病リスク認知方略やヘルスリテラシーの諸課題といった、現在の世界的トピックに直接関わるものを包含しており、「我々はどのように疾病を認知し、どのように疾病を怖れているのか」がテーマであることを説明して、被験者の知的興味を喚起して、積極的な研究参加を呼び掛ける予定である。 また、もし今後も長期に渡り対面での研究参加の呼びかけが難しい情勢が続く場合は、倫理的な課題はあるが、ITを活用した遠隔での研究参加について検討が必要かもしれない。
|