2020 Fiscal Year Research-status Report
現代学生のヘルスリテラシーと健康リスク認知特性に関する探索的研究
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18K10424
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
武田 龍一郎 宮崎大学, 安全衛生保健センター, 教授 (90336298)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルスリテラシー / 健康リスク認知 / ヘルスプロモーション / ヒューリスティックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヘルスリテラシーと健康リスク認知特性を主題とし、主に保健サービスの利用者(主に学生を想定)と保健サービス提供者である医療者との効果的なヘルスコミュニケーション方略に資する知見を得ることを目的とした、一連の探索的研究である。 令和元年度末までに合計163名の大学生の研究参加(アンケート提出)を得ていたが、当該の令和2年度は85名の大学生の研究参加を得ることができた。現時点では、統計学的な検討にはケース数が充分でないが、全体の傾向を把握するために予備的かつ中間的なデータ解析を行った結果、健康リスク認知特性に関する調査(調査II)について以下の結果が得られた。 1)健康リスクイベント項目のVAS値の検討;健康リスクイベント項目の利益と危険性,それぞれのVAS値をプロットした結果、学生らが安全⇔危険の二分思考に近い認知を行っている可能性が示唆された。この認知方略は,ヒューリスティックス方略(意思決定を簡便な解法や法則で行うこと)の範疇ではないかと推測している。 2)性差による比較:インターネットの利用等の3項目で,男子学生は女子学生よりも統計学的に有意に利益のVAS値が高かった。また子宮頸がんワクチン等の3項目で,女子学生は男子学生よりも統計学的に有意に危険性のVAS値が高く、特定の健康リスクイベント項目において,性別により異なるアプローチがヘルスプロモーションに有効である可能性を推測している。 これらの結果については学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度末までの研究期間3年間に、140名の医療従事者と248名の大学生への調査を行った。これは研究期間全体(平成30-令和3年度)でのケース目標数合計(学生480名、医療従事者180名)の約6割に相当する。 令和元年度終盤から、新規感染症の世界的流行が発生し、講義の多くがリモートになる等の時期が繰り返され、大学生を対象とし、対面での研究内容説明を旨とする本研究においては、研究参加者の募集状況に甚大な影響が生じている。それでもキャンパスの閉鎖期間が比較的少なかった学部の大学生を中心に、なんとか研究参加者の積み増しを得た。 総合的に思料して進捗の遅れは「遅れている」と判断した。次年度以降に進捗の後れを取り戻すべく、次項の推進方策により創意工夫して取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が所属する保健管理部門(いわゆる保健管理センター)では、学生健診の事後フォローアップや健康相談、身体疾患の応急手当、またその他の相談(カウンセリング等)を合計すると、例年であれば年間3000件余の利用者があるが、令和元年以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、大学での対面講義はかなり制約を受け、大学キャンパスへの登校する学生は激減しており、研究参加の呼びかけ、対面での説明や質疑が難しく、研究参加者の募集が著しく困難となっている。今後の進捗も、同感染症の流行状況に左右されており、予測が極めて難しい情勢。またリモートでの研究参加募集への研究形態変更も考慮したが、研究データの質的変化が不可避であろうことから止むを得ず断念した。 本年度は、まずは研究期間内に出来るだけ研究参加者数を積み増す。またケース数は未だ充分でないが、全体の傾向を把握するための予備的なデータ解析を行い、その結果については適宜学会等で報告していく。研究期間延長も検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症による社会情勢(緊急事態宣言等の感染状況)の変化で、対面で行う研究参加者の募集が困難となり、データ収集に遅れが生じている。それに伴い、中間的なデータをまとめた発表を予定していた学会の多くが中止となったため、旅費とデータ入力等に予定していた予算を使用しなかった。次年度には研究参加者の増加を期すが、社会情勢(感染状況)に左右されてしまうため、その情勢に応じて研究期間延長を考慮している。
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