2021 Fiscal Year Research-status Report
現代学生のヘルスリテラシーと健康リスク認知特性に関する探索的研究
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18K10424
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
武田 龍一郎 宮崎大学, 安全衛生保健センター, 教授 (90336298)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘルスリテラシー / ヘルスプロモーション / 健康リスク認知 / 健康教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヘルスリテラシーと健康リスク認知特性を主題とし、保健サービスの利用者(主に学生を想定)と保健サービス提供者である医療者との効果的なヘルスコミュニケーション方略に資する知見を得ることを目的とした、一連の探索的研究である。 令和3年度末までに合計348名の大学生の研究参加(アンケート提出者数)を得た。全体の傾向を把握するために予備的かつ中間的なデータ解析を行った結果、ヘルスリテラシーに関する調査(調査I)について以下の知見が得られた。 有効回答者のデータ解析を行った結果、ヘルスリテラシーの総合得点(以下、HLスコア:50点満点、高得点ほど高水準)は28.5±6.2点(平均±標準偏差)であった。先行研究における一般の日本人平均の25.3点と比べると高く、一方で医療従事者(看護師)では平均28.5点と、同水準のHLスコアであった。しかしながら諸外国と比べるとかなり低い水準に留まった。性別で、男子学生(29.3±6.1点)が女子学生(27.5±6.2点)に比してHLスコアは有意に高かった。被験者の数が多かった3学部(農学部、工学部、医学部)について学部間の差異を検討したが、統計学的有意差は認めなかった。 本研究結果は、大学生としての基本的属性(知的水準や教育効果)がHL水準に寄与しているのではないかと考えた。性差については、健康に係る情報を取り扱う際の認知特性(健康への不安や健康リスクに対する認知方略)に性差の影響が大きいのではないかと考えた。一方で、日本人のHLが諸外国に比べて低水準であることは先行研究でも指摘されているが、本研究結果も同様であった。これらのことから、我が国のHLの底上げを効果的に図るためにも、大学生に対して健康教育を積極的に行うことの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度末までの研究期間に、140名の医療従事者と348名の大学生への調査を行った。これは研究期間全体でのケース目標数合計(学生480名、医療従事者180名)の約7割強に相当する。この数年間、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が発生し、大学や医療機関では広範な活動自粛を余儀なくされ、大学生や医療従事者を対象とした対面での研究内容説明を旨とする本研究においては、研究参加者の募集状況に甚大な影響が生じている。昨年度も研究参加者の積み増しを得て7割には到達したものの、目標数には及ばす、研究期間の延長を申請して本年度が最終年度となった。進捗の後れを取り戻すべく、次項の推進方策により創意工夫して取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度を最終年度とするため、被験者数について当初目標数に向けて出来るだけ積み増しを図る。その一方で、総合的なデータ解析に最小限必要なサンプルサイズについて、許容誤差や信頼度、回答比率等のパラメータを再考し、学生対象部分については当初想定していた信頼度を数ポイント緩和して、信頼度95%を下回らないことを条件にサンプルサイズを算定し、300台後半の被験者数で解析は可能と判断し、年度中には総合的なデータ解析を行い、結果について適宜学会等で報告していく。
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Causes of Carryover |
理由:この数年間、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が発生し、大学での教育・研究・診療等の主たる活動について、広範な活動自粛を余儀なくされたため、大学生を対象とした対面での研究内容説明を旨とする本研究においては、研究遂行に甚大な影響が生じている。研究に関連した情報収集や成果発表のための学会参加が主な用途であるが、研究代表者は所属機関の保健管理を担っており、県境を越える移動は全く行えず、学会参加がままならない状況が続いたため、本研究期間の延長を申請して本年度が最終年度となり、次年度使用額が生じるに至った。 使用計画:直近の新型コロナウイルス感染対策で求められる行動制限の状況からは、本年度は情報収集や成果発表のための国内外の移動は概ね可能で助成金を使用させて頂くことは十分見込めると思料している。
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