2020 Fiscal Year Research-status Report
小児期から成人期への移行を見据えた移行期医療看護支援モデルの構築
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18K10433
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
前田 貴彦 三重県立看護大学, 看護学部, 准教授 (60345981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移行期医療 / 思春期 / 慢性疾患 / 看護師 / 患児 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児慢性疾患患児の成人期医療への移行を妨げる要因や課題および円滑な移行のために必要な看護師の役割や看護支援内容の明らかにするために、看護師への面接調査を継続して実施した。看護師は、移行を難しくしている要因として、小児科医と患者・家族の関係性の深さや担当医が変更することへの不安があると考えていた。そして、患児や家族の安心のためにも移行後も小児期から関わる看護師の継続した支援が必要であると考えていた。 また、看護師の移行期患者や家族の移行期支援を実施する際に考慮することについての認識を明らかにするために、慢性疾患をもち移行期にある患者に関わる部署に勤務する看護師を対象に、無記名による自記式質問調査を実施した。調査の結果、53名から回答が得られ、移行期患者の移行期支援に携わった経験について、今回の対象者では「携わったことがない」31名(72.1%)と最も多く、移行期支援の経験が少ない現状が浮き彫りとなった。さらに、移行期患者や家族の移行期支援を実施する際に考慮することに関する必要性の認識(平均値5.0-1.0)が高かった項目は、「移行期患者に対する移行後の支援体制(4.52)」、「移行期患者の家族に対する移行後の支援体制(4.48)」、「移行に対する家族の意思(4.45)」であった。 一方、認識が低かった項目は、「家族の経済状況(3.69)」、「移行期患児が健康増進や維持に必要な情報を収集し、それを理解し、利用するための能力(3.88)」、「疾患に関連した自己の性に関する問題についての移行期患児の理解度(3.88)」であった。これらの他に、看護師が考慮する必要があると認識していたこととして「移行期患者や家族と移行先の成人科医師との関係性」「移行期における小児科と成人科のひきつぎ状況」等が挙げられた。 よって、移行を円滑に進めるためにも、移行後の支援体制のさらなる充実を図る必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在までに移行期医療や看護支援に関する文献検討および現状把握を行った。2019年度からは、小児慢性疾患患児の成人期医療への移行を妨げる要因や課題および円滑な成人期医療への移行のために必要な看護師の役割や看護支援内容を明らかにするために、患児、家族、看護師を対象に面接調査を実施し、その結果の分析を行ってきた。 しかし、新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大により、現在においても対象者となる患者や家族との接触が不可能な状態が続いており、調査協力依頼やデータ収集が予定通り進んでいない状況である。看護師においては、昨今の医療施設の状況が反映し、当初の計画よりは研究の進捗に遅れが生じているものの、オンラインを活用した面接を行うなどの工夫をし、現在においても継続したデータ収集を行いながら、順次分析を行っている。 また、2020年度には、看護師を対象に移行期医療において配慮すべき事柄に関する認識についての実態調査を行った。その結果の分析を行った。そして、今年度より開始予定である看護師対象の調査に向けて質問紙の作成や依頼病院の選定など調査開始のための準備を行いった。 なお、本研究は、2020年度が終了予定年度であったが、この様な進捗のため、終了年度を2021年度までに延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も継続して患者、家族、看護師を対象に調査協力の依頼を行い、対面での面接やオンラインを用いたデータ収集を行いながら、最終的に収集できたデータで分析と評価を行う。また、今年度は、看護師を対象者とした質問紙調査を実施していく。質問紙調査では、対象者との直接的な接触を避けられる状態である。その為、新型コロナ感染症等の社会的要因により研究の遂行が滞る事なく、実行可能であると考える。 しかし、現状の社会情勢を鑑みると、新型コロナ感染症に伴う医療現場の逼迫状況に対し、早期の収束が見通せない中、本研究に協力を得られる対象者が当初の計画より減少する可能性は否めない。その場合は、面接への協力者数および質問紙の回収率が予定より低下する可能性がある。当初の見込みより質問紙の回収率が低下した際は、新たな施設への依頼を行う。また、調査結果を補完するために、類似の先行研究等の文献検討結果を活用していく。 これらの方策をとることで、当初の研究計画で期待していた研究成果を見出すことができると考えている。
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Causes of Carryover |
年度使用額が生じた理由として、当初の計画では、2019年度に小児慢性疾患患児や移行期の患者ならびに小児期発症の慢性疾患患者の看護経験を有する看護師に面接調査を行い、データ分析を開始する予定であったが、新型コロナ感染症の影響により、当初の計画よりデータ収集数が少なく、かつ依頼やデータ収集に時間を要したため、これらの調査に必要な経費が次年度使用額となって生じた。 資金の使用計画として、2021年度も継続して面接調査を実施する。また、2021年度の研究計画において、全国規模での質問紙調査の実施や結果公表のためのホームページ開設等の費用に充てるため、当初計上した予算については、2021年度内に使用できると考えている。
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