2018 Fiscal Year Research-status Report
乳児の授乳拒否行動が示す母乳の匂いの変化と乳腺炎との関連
Project/Area Number |
18K10443
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Research Institution | The Japanese Red Cross Akita College of Nursing |
Principal Investigator |
吉田 倫子 日本赤十字秋田看護大学, 看護学部看護学科, 講師 (30463805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 ひとみ 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (80319996)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 母乳 / 匂い / 乳腺炎 / 授乳拒否行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳腺炎は、産褥期の女性の2-3割が罹患する健康問題で、重症化すると膿瘍を形成し、外科的処置が必要になるなど苦痛が大きい。乳腺炎時は母乳の味や成分が変化するが、このメカニズムは母乳の匂いに影響を及ぼし、乳児の授乳拒否の原因になっている可能性がある。そこで、本研究は、第1に正常な母乳と乳腺炎時の母乳の匂いを比較し、乳腺炎時の母乳の匂いの特徴を明らかにする。第2に乳児の授乳拒否時の母乳の匂いと、乳腺炎時の母乳の匂いを比較し、乳腺炎時に児が授乳を拒否する原因に匂いの関与がどの程度あるのかを明らかにすることを目的とした。これらにより、乳児が示す授乳拒否行動の要因が明らかとなり、乳腺炎の発症を予知することが可能になると考える。 2018年度は、学内の倫理審査にて承認を得た後、調査1の調査協力を求める予定としていた機関へ研究についての具体的な説明と依頼をした。その結果、調査機関の倫理審査が新たに必要となったため、現在準備している。調査2の開業助産師への調査協力依頼として、現在2名の開業助産師に交渉中である。本研究の匂いの測定は、ポータブル型ニオイセンサXP-329ⅢR(新コスモス電機株式会社)により、乳頭周辺の匂いの強度を測定する。また、母乳を採取し、におい識別装置FF-2020(島津製作所)にて匂い分析を行うこととしている。現在、ポータブルニオイセンサを用いた測定に関しては、測定方法や測定時の条件について専門家のアドバイスを受けながら予備実験を重ねている。におい識別装置による分析に関しては、島津テクノリサーチに生体資料分析依頼票を提出し、受け入れ許可の返事を待っている。さらに、本研究の先行研究として、母乳分泌機序において最も変化の激しい産褥1週間の母乳や乳頭の匂いについても把握しておく必要があったため、調査3として研究内容に加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では当該年度中に学内の倫理審査のみでなく、研究協力機関の倫理審査も全てクリアする予定であったが、遅れている。その理由として、所属機関が実験研究の経験が少なかったため、実験研究を行うための環境や体制を整える必要があった。また、当初、調査1・2ともに研究対象及び時期を生後6か月以内の母乳栄養児としていたが、母乳の生理的変化は、「産褥1週間以内」と、「児が離乳食をスタートする6か月前後」、また母乳が成乳となり安定している時期である「産褥1週間以降~離乳食開始以前」の最低3つの時期で、異なる状態であることが予測されたため、正常な母乳の匂いを調査する予定としている調査1については、調査時期(対象)を区分してさらにきめ細かな検討が必要と考えられた。よって、研究対象及び時期を「生後1-2か月児の母親とその児」と変更した。また、上記にあたって、母乳分泌機序において最も変化の激しい産褥1週間以内の母乳や乳頭の匂いについての調査もしておく必要が出てきたため、この時期の匂いの変化についてポータブル型ニオイセンサを用いて明らかにすることを、研究内容に含めた(調査3)。調査3についての研究協力施設は確保できており、年間の分娩件数から予測して60名ほどの対象者が得られると見積もっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①現時点で依頼をしている調査1の研究協力機関2機関の倫理審査の承認を得る。②ポータブル型ニオイセンサによる測定に関しては、予備実験により、測定方法と条件を確立後、③調査3「正常な産褥1週間以内の母乳や乳頭の匂い」に取りかかり、今年度中に論文を完成する。④秋頃までに調査1の調査をスタートする。⑤調査2について、開業助産師に調査協力依頼後、もし調査1の進行がスムーズでなければこちらを先にスタートすることも検討する。
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Causes of Carryover |
ポータブル型ニオイセンサXP-329ⅢR(新コスモス電機株式会社)は、母乳の匂い測定についての実績がないため、研究データの信頼性を確保する上で、母乳の匂い測定が可能であるかとその精度を再度入念に確認する必要があった。そこで、業者の協力を得て、デモ機で予備実験を行った後に購入することとした。また、本機器での測定後にデータを臭気指数に変換する必要があるが、既存の母乳用臭気指数テーブルが存在しないことがわかったため、本研究用に臭気判定士に作成を依頼する必要がある。これらの準備が必要であったため、センサの購入までに時間を要した。準備が整ったため、現在注文中である。臭気指数テーブル作成費用も必要となるため、今年度学会発表にあてていた分の費用を使用する。また、今後の調査実施に伴って、におい識別装置での匂い分析も必要となるが、分析業者と検討したところ、分析費や郵送費を最小限とするために、超低温フリーザーで-80℃以下に保存後、ある程度のサンプルをまとめて測定することとした。分析費用は今年度以降必要に応じて使用していくこととなる。次年度以降は成果報告も行うため、計画の通り学会参加費用も使用する。
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