2018 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児突然死症候群に潜在する先天性代謝異常症の探索と遺伝カウンセリング体制の構築
Project/Area Number |
18K10465
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
島田 祐美 大分大学, 医学部, 医員 (50548146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久我 修二 大分大学, 医学部, 助教 (20773815)
井原 健二 大分大学, 医学部, 教授 (80294932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳幼児突然死症候群 / 新生児マススクリーニング / タンデムマス法 / 遺伝カウンセリング / 先天代謝異常症 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンデムマス法は、乳幼児突然死症候群の中の先天代謝異常症を同定し死因の解明に繋がる場合がある。本研究では、タンデムマス法による新生児スクリーニング導入前に乳幼児突然死症候群で死亡した症例の保存濾紙血に着目し、未診断の先天代謝異常症の実態を調査する。さらに発見された先天代謝異常症の死亡症例を通してその遺族の中の潜在的なニーズを把握し独自の遺伝カウンセリング体制を構築することを目的とする。 新生児マススクリーニング検査後に保管されている濾紙血の使用に関して、大分県の許可を得た後、大分大学医学部と大分市医師会立アルメイダ病院の倫理委員会で承認を得て本研究を開始した。まずは補正式の作成を行うため、大分市医師会立アルメイダ病院臨床検査部に保管されている濾紙血を用いて長期保管による測定値変化について検討を行った。 既報では乾燥保存濾紙血は長期保存により測定値が変化すると報告されている。そこでアミノ酸11項目とアシルカルニチン31項目について4年間の変化傾向と相関性保持の有無について、2014年7月のタンデムマス法の検査結果と2018年8月の検査結果で散布図を作成し検討を行った。7項目のアミノ酸(ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、チロシン、バリン、アルギニン、オルニチン)で相関性を保持した変化がみられ、保存サンプルの測定値から、4年前の検査結果を推測することが可能と考えた。アシルカルニチンについては、8項目(C0、C14、C14:1、C16、C18、C5、C5OH、C8:1)において相関性を保持した変化を認め4年前の検査結果が推測可能と結論した。経時的なデータ分析結果を解析することでより正確な補正式の作成が可能になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の検体でも相関性が保持されていれば評価が可能であることが判明し、さらに濾紙血の長期冷蔵保存による影響を検討する必要がある。現在研究開始時期(2018年7月)に新生児マススクリーニング検査を実施した濾紙血90例を用いて、冷蔵保存1か月後、3か月後、6か月後、1年後、2年後、3年後に再度タンデムマス分析を行い、前向きに経時的変化を確認する計画を実施中である。現時点で6か月までの分析結果がでており、データの解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
①補正式の作成:引き続き濾紙血の冷蔵長期保存による影響を検討し、補正式の作成を進め、一定の傾向が得られれば補正式を用いた評価方法を策定する。 ②大分県内におけるSIDSの症例把握:大分県でタンデムマス分析が導入される前の2009年4月~2014年3月までの間に乳幼児突然死症候群と診断された症例ついて大分県の全ての2次医療機関に書面で情報提供を依頼する。抽出された患者さんのご家族には本研究の意義を十分に説明し書面同意を得たのちに新生児マススクリーニング検査後に保管されている濾紙血の有無を確認する。 ③対象症例のタンデムマス分析・解析・評価:大分市医師会立アルメイダ病院検査部で保管されている対象症例(幼児突然死症候群例)の新生児マススクリーニング採血濾紙を特定し同検査部でタンデムマス分析を行う。 ④遺伝カウンセリング体制の確立:脂肪酸代謝異常症等の先天代謝異常症が判明した死亡症例のご家族に向けた特別の遺伝カウンセリング体制を構築する。医師、認定遺伝カウンセラー、看護師、保健師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなど多職種の人でサポートチームを作り、突然死の可能性のある特殊な遺伝性疾患に対する正確な情報の提供、発症予防法、家系内の解析(発症前診断・保因者診断)など多面的なカウンセリング体制を構築する。
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Causes of Carryover |
データ解析のためのパソコン、SPSS解析ソフトを購入予定であったが、購入できなかったため、次年度使用額が生じている。またタンデムマス分析を行う際に使用するパンチャーも購入予定であったが、検品に時間を要したため、次年度に購入することになった。検査実施機関で使用する消耗品に関して、随時購入を進める方針である。臨床遺伝専門医の資格取得のために認定試験を受験し、また人類遺伝学会や学会主催のセミナー・ロールプレイ実習にも参加し遺伝学的知識の習得、遺伝カウンセリング技術の向上をはかっていく。
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