2019 Fiscal Year Research-status Report
正期産期の血圧の安定につながる妊婦の水とくらしに関する研究
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18K10480
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Research Institution | Tenshi College |
Principal Investigator |
中田 かおり 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (70469980)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 妊婦 / 高血圧 / 体水分 / 正期産期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、妊娠後期の血圧の安定につながる母体の体水分や循環動態に影響を及ぼす日常生活行動を探索することによって、明らかな病理的な経過を伴わない正期産期の血圧上昇の予防につながる知見を得ることである。本年度は昨年度から引き続き、関連領域で幅広く情報収集を試みたが、予定していた専門家からのヒアリングや研究協力施設との打ち合わせ等が実施できなかったため、主に文献検討により研究計画の検討を行った。 本研究では、明らかな病理的な経過を伴わない正期産期の血圧の安定に寄与する因子を探索するため、血圧や血管拡張等の基本的な生理的機序に関連する日常生活行動を中心に調査項目を検討している。中でも、血管内皮細胞から放出される一酸化窒素(NO)は、血管拡張作用により血圧低下に関与することと、抗酸化作用があり、活性酸素の働きで作られる過酸化脂質が引き起こす動脈硬化のリスクを低減させることが知られている。健康な妊婦では、NO値の顕著な上昇がみとめられるとの報告があり、NOが妊娠期の血管における生理的適応に関与することが示唆されている。さらにNOは、血管内平滑筋に働き血管収縮を引き起こすEndothelin-1(ET-1)を抑制する働きもある。 日常生活との関連では、緑茶などに豊富に含まれるカテキンの抗酸化作用とNOの産生を促進する作用、肉類や大豆などに豊富に含まれる天然アミノ酸の一種アルギニンのNO合成への関与、中等度の有酸素運動がET-1を抑制し高血圧の予防につながることなどの知見がある。また、妊娠前期の睡眠時間が妊娠後期の血圧上昇および妊娠高血圧・妊娠高血圧腎症のリスクと関係している、との報告もある。これらの知見を統合し、体水分や循環動態に焦点を当てた調査方法を吟味して実施する本研究は、正期産期の血圧の安定につながるケアの開発に資すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、当初予測していなかった研究者の異動先における業務多忙により、研究環境の調整と研究計画の見直しが著しく遅延した。文献検討や産科領域以外の学会発表等を含めた情報収集を行い収集した情報を統合し、研究計画を具体化しているところであるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、周産期医療施設での調査が困難で、研究に関する調整等を進められない状況であった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大状況を注視しながら必要な研究計画の見直しを行い、倫理審査の承認を経て、研究協力施設の承諾を得られた後、臨地でのデータ収集を開始する。パイロットスタディを実施し、研究計画書を完成して、本調査を開始する予定である。本調査に向けた研究計画は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮した研究計画の見直しも視野に入れながら、吟味する。パイロットスタディでは、データ収集と平行してデータが一定量収集できたところで分析を行い、対象数を含めた研究方法の見直しと必要な修正を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、施設におけるデータ収集を開始できなかった。そのため、データ収集に伴う謝金・謝品費、研究補助者への人件費・謝金、データ管理のための物品費、研究方法を具体化するための外部専門家やアドバイザー等との交流・会議のための会議費、旅費が未使用となった。 次年度は、データ収集にかかる研究補助者への人件費、研究参加者・協力施設への謝品費用、パイロットスタディの分析、研究計画の調整・打ち合わせにかかる会議費、旅費の支出が見込まれるため、約280万円の研究費を使用する見込みである。データ収集にかかる人件費・謝金として約180万円、研究協力者への謝品約30万円、データ収集・管理のための器材購入費として約20万円、国内外の研究者へのコンサルテーションや研究者との意見交換のための学会等参加費用として約20万円、その他会議費・消耗品等については、新型コロナウイルス感染予防対策にかかる物品購入や環境調整を含め、約30万円の使用を予定している。
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