2018 Fiscal Year Research-status Report
在宅における気管内吸引カテーテルの再使用と呼吸器感染症発生との関連の細菌学的検証
Project/Area Number |
18K10502
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白井 文恵 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50283776)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 かおる 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60332376)
阪上 由美 武庫川女子大学, 看護学部, 助教 (60711512)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 気管内吸引カテーテル / 呼吸器感染症 / 在宅療養 |
Outline of Annual Research Achievements |
病院施設での気管内吸引カテーテルの取り扱いはディスポーザブルであるにもかかわらず、在宅ケアの現場では再使用されることが多い。このような再使用は、肺炎をはじめとする呼吸器感染のリスクを増大させる可能性がある。本研究では、在宅ケアで再使用される吸引カテーテルの管理方法と細菌汚染状況に着目し、在宅療養者に対する呼吸器感染症の発生を低減させるためのエビデンスを提示することである。 2018年度は、気管切開を受け呼吸管理を実施している者に横断的調査を実施した。調査内容は、肺炎既往歴、呼吸管理方法(吸引実施者と頻度、手技、管理方法)とした。28都道府県58か所の訪問看護ステーションの協力が得られ、96名より回答を得た。欠損値を除いた84名について分析の対象とした。療養者の年齢分布は20歳未満が24名(28.6%)、20歳から65歳未満が32名(38.1%)、65歳以上が28名(33.3%)であった。原疾患としては神経筋難病が最も多く32名(45.1%)であり、過去1年間の肺炎での入院既往の割合は17名(20.2%)であった。訪問看護師以外に吸引を実施している者は主介護者が75名(89.3%)で、吸引前に手洗いを実施している者は61名(73.5%)と高い実施率であった。手袋を着用している者は37名(44.6%)であった。吸引カテーテルを再利用している者は76名(91.6%)であり、浸漬法によるカテーテル保管を実施している者が40名(54.8%)、乾燥法では33名(45.2%)であり、ほぼ半数であった。カテーテルの交換頻度は1日に1回が最も多く54名(85.7%)であり、在宅での気管内吸引カテーテルの再利用率は高く、1本を1日使用している実態が明らかとなった。 2019年度は、さらに調査対象数を増やし、肺炎と気管内吸引カテーテル再利用との関連の実態を明らかにしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の調査より、気管切開による呼吸管理を受けている者の養育者および介護者による呼吸管理の実態が明らかとなった。調査方法が、全国の機能強化型訪問看護ステーション等の医療的ケアに対応可能な訪問看護ステーションの管理者・看護師を通じた、対象者への調査であったため回収率が低かった可能性がある。従って2019年度は、調査方法を精査し、具体的には、対象者への聞き取り調査を実施し、より再利用の実態を明らかにする予定である。 また、再利用気管内吸引カテーテルの細菌汚染状況を把握するための予備実験として、実験室内で行った細菌学的実験では、細菌で汚染した気管内吸引カテーテルを水道水で洗浄した場合の細菌除去率や、乾燥法、あるいは浸漬法で気管内吸引カテーテルを保管した場合の細菌の増殖についても確認できたため、2019年度は、実際の再利用吸引カテーテルからの細菌検出と肺炎発症との関連を検証していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
関西圏の訪問看護ステーションを利用し、吸引処置を受けている在宅療養者を対象とし、①カテーテル汚染についての細菌学的調査を実施する。具体的には、10名を対象とした3か月の縦断研究を実施する。週に1回、使用済気管内吸引カテーテルおよびそのカテーテルを洗浄、保存している溶液を採取し、研究室にて付着細菌数をカウントする。また1か月ごとに喀痰培養とカテーテル付着菌の培養を行い、菌種を同定する。呼吸器感染が疑われる症状が出現した場合、追加で喀痰培養を行う。菌種の同定は業者に委託する。カテーテルの再利用回数や洗浄方法、保存液の種類や交換頻度についてのデータ収集も合わせて行う。また、カテーテル先端の摩耗状況を光学顕微鏡にて画像採取し、細菌汚染状況との関連を検討する。②感染発生状況の記述調査として、吸引カテーテルの再利用回数、管理方法(浸漬法・乾燥法)、保存液の種類や交換頻度と呼吸器感染症の発症リスクとの関係についての縦断的調査を行う。関西圏の訪問看護ステーションを利用し、吸引処置を受けている在宅療養者100名を対象とし、感染症状・兆候の有無(発熱、痰の性状)、口腔ケア状況についての記述調査を実施する。また、看護記録から属性データ(年齢、性別、病歴、生理学的データ)や呼吸器感染症既往歴のデータを収集する。③吸引処置の操作手技に関する実態調査として、吸引実施者の吸引カテーテル操作手順と実際の操作手技を比較し、清潔操作の実態を把握する。在宅ケア現場における吸引ケア提供者10名を対象に、自分が行っている吸引操作と洗浄の手順、吸引カテーテルを再利用することに対する意識についてインタビュー調査を行う。合わせて、実際の気管内吸引とカテーテル洗浄の操作手技をビデオで撮影し、操作手順のどの場面でカテーテルが細菌汚染する可能性があるのか、感染経路の探索を行う。
|
Causes of Carryover |
2018年度に再使用された気管内吸引カテーテルの細菌培養を業者委託する予定であった。しかし、2018年度は細菌培養を研究者自身が行い、その費用が発生しなかった。2019年度は再使用気管内吸引カテーテルが多くなることが予想されるため、業者への細菌培養委託のために使用する予定である。
|