2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の意思決定能力判定指標の開発ならびに意思決定支援アルゴリズムの構築
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18K10543
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 紀代美 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (60269636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 裕香 名古屋市立大学, 看護学部, 助教 (40808870) [Withdrawn]
原沢 優子 名古屋市立大学, 看護学部, 准教授 (70303774)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 意思決定 / ACP / 高齢者 / 介護施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、介護施設入所中の高齢者の意思決定支援(ACPの実践)における高齢者自身の意思の確認方法に関する文献を中心に検索し、その中で主要な文献のクリティークを行った。その過程において、治療に伴う同意判断能力を評価するためのMacCAT-T評価法にいきついた。これは、米国のGrisso T.らによって開発され、「理解」「認識」「論理的思考」「選択の表明」で構成されており、高齢者と調査者が会話や面談を通して上記の4領域について総合的に判断するものである。この評価法は、精神科領域、あるいは高齢者領域においても使用され検討されている。特に認知症のある高齢者に用いた場合、認知機能の評価ツールであるMMSEが18点以上ないと意味のある判断と言えないとの結果が報告されている。 一方で、認知機能評価であるMMSEは、聴覚機能に依存した質問方法(一部、ものを見せる方法も含む)が中心であるため、聴覚機能の低下した高齢者については、実際の認知機能よりも低め評価されるとの研究もある。従って、上記のMacCAT-Tも基本的には口頭での質問方法が主であるため、その実施方法を工夫することで、より理解が髙まる可能性があると考える。 また、高齢者との意思の疎通において、言語以外のコミュニケション方法に関する文献等も検討したところ、高齢者とコミュニケーションをとる側の聞く姿勢、伝える姿勢が影響するとの文献もみられたことから、高齢者と対峙する側の関わり方も重要であることがわかった。 以上のように、高齢者の意思決定支援に関する文献検討は予定通り進んでおり、この結果を元に次年度以降の研究計画に反映できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、文献検討を中心に、高齢者自身からの意思の確認方法等を中心に検討を行った。高齢者の意思を本人の直接的な回答を得ることで把握するという方法は、高齢者の認知能力、集中力、回答の安定性等の課題や限界についても明らかとなった。そこで、高齢者の意思確認の方法として、高齢者の表情や発語、うなずき、身振りなどの言語以外の意思表現についても文献検討を行ったところである。従って、現時点では予定通り進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、平成30年度に文献で検討した内容をもとに、調査項目の候補を抽出するために、第一次段階として、文献で明らかになった項目を観察しその実施可能性を検討する予定である。また、計画段階では、高齢者の意思決定の評価法についての情報がなかったものの、今回の文献検討で明らかになったMacCAT-T評価法について、その使用可能性について検討を行いたいと考えている。具体的には、MacCAT-T評価法の手法に関する面接法の学習行うと共に使用許可の受諾等について進める予定である。さらに、高齢者施設入所中の高齢者が何らかの意思を表明する場面に立会、その時の高齢者の状況の観察を行うことで、表情やしぐさに関する情報収集を行う調査も同時並行で進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度の計画が、研究分担者2名を加えた3名による文献検討であったが、1名の研究分担者が退職により研究から離脱したことで分担金を使用しなかったこと、さらに、文献が学内及び大学が契約しているJournalからそのほとんどを入手することができたため、それほどの経費がかからなかったことがその理由と考えられる。 しかし、次年度は、フィールドに出向き、高齢者の観察を行う予定であるため、調査のための人件費、交通費、謝金等が経費として必要になることから、次年度への繰越金は執行できるものと考える。
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