2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の意思決定能力判定指標の開発ならびに意思決定支援アルゴリズムの構築
Project/Area Number |
18K10543
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 紀代美 名古屋市立大学, 大学院看護学研究科, 教授 (60269636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 裕香 名古屋市立大学, 看護学部, 助教 (40808870) [Withdrawn]
原沢 優子 名古屋市立大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (70303774)
小出 由美 大和大学, 保健医療学部, 講師 (00840563)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 意思決定 / 看護師 / 終末期 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度においては、研究の最終目的である認知症高齢者の意思決定能力指標を開発するというに到達するために、以下の2つの研究を行った。 第一の研究は、認知症高齢者の意思決定の実際及びその可能性を探るため、小規模多機能施設のサービスを利用している認知症高齢者11名に対し、危篤時や終末期の治療選択や人生のしまい方について、研究者と対象者をケアしている施設の看護師等の職員が同席する中でインタビューを実施した。対象者は、80歳から97歳で平均年齢87.7歳、全て女性あり、長谷川式簡易知能評価スケールが15点以下の者であった。結果は9名からは「できる限りの治療や処置を望む」や「何もしないで自然に逝きたい」「もう十分である」などの意思をインタビュー時に言葉により確認することができた。ただし、意思確認ができない者や発言内容に一貫性を保てない高齢者の存在も明らかとなった。 第二研究では、介護老人保健施設(超在宅復帰型)で働く看護師6名(平均年齢47歳、全て女性)にACP実践の状況とACPに対する看護師の認識に対してインタビューを行った。結果は、危篤時や急変時への対応等に対する説明には高齢者を同席させているものの「認知症が有り高齢者の意思確認は難しい」と感じ、結果的に「家族の意思が重要、最優先とする考え」が語られた。しかし、入所時だけでなく、様々な機会を利用して意思確認を行っている施設のシステムの実態及び看護師らによる、「高齢者本人の意思は無視できない、高齢者の話す言葉や仕草・表情は大切ではないだろうか」と考え、日々のケアの中で高齢者のさりげない、あるいは曖昧な反応から探ろうとする努力がされていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の最終的な目的は認知症高齢者の意思決定に関わる能力を多面的に評価するための指標を作成し、その結果を基にそれぞれの機能を補うことでより高齢者の意思を保証するためのシステムを提案することにある。 しかし、平成30年度の文献検討ならびに令和元年度に実施した看護師のACP実施に伴う高齢者の能力・機能把握及び活用に関する研究から、そもそも看護師のACPに対する認識の低さ及び意思決定そのものへの関与が少ないことが明らかとなった。そこで、指標を作成する前にその原因を探ることが優先事項と考えた。特に、認知症高齢者の意思確決定の基本的な能力である視聴覚機能については、看護師はそれらの情報の必要性への認識が低いこと、さらに自分自身の経験からその機能や能力を自己判断していることがわかった。この様なことから、当初の研究計画に看護師の認識を把握するという研究を追加したこと、さらに高齢者自身の視聴覚機能の把握のための研究も対象者確保に困難を極めたため、視聴覚という重要なキーワードに関する研究を一部修正する形で実施してる段階であり、予定通り進んでいないことから「やや遅れている」という判断を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度には、以下のように実施する計画である。 認知症高齢者の視聴覚機能と理解度の関係を把握するための研究を計画する。 対象は、認知機能が低下した高齢者が多数入所してる介護老人保健施設ないしは介護福祉施設で実施を予定している。対象の選定は、認知機能が18点未満であり、意思疎通が可能な高齢者とする。対象には、視聴覚機能を客観的な機器を用いてそれぞれ測定を行う。その後、短い物語の理解度を測定する。その後、1か月程度のインターバル期間をおき、一回目の測定時に難聴があった高齢者及び視力の低下した高齢者に対しては、それらを補填する対策を講じた上で、認知機能評価と共に再度短い物語の理解度の測定を行う。視聴覚の機能低下のみられない高齢者にも同様の測定を実施する。この研究により、高齢者の理解度における視聴覚機能の低下の状況が把握可能と推察する。 本研究を実施するためには、対象者の確保が第一優先であることから、早急にその確保に努力する予定である。ただし、令和2年4月の段階では、コロナウィルスにより介護施設全般における研究の実施は不透明な状況である。今後の状況によっては、計画を大きく変更せざるを得ないであろう。その場合には、視聴覚機能と認知能力に関する文献あるいは理論について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画においては、令和元年度は高齢者施設にて、認知症高齢者に対して視覚機能、聴覚機能を機器を用いて測定すると共に、高齢者の表情や仕草、主観的な見え方や聞こえ方について観察研究を行う予定であった。しかし、調査協力を依頼した施設において対象者や保護者の協力が得にくいとの理由により、研究協力の辞退があった。そこで、研究内容の修正を行ったうえで別の研究協力施設を探ることとなり、それに大幅な時間を要した。その後新しい協力施設にて修正研究の実施を行ったもののその期間が年度末まで継続することとなり、修正前の研究内容は未実施となった。 以上の理由により、令和元年度に予定していた視力測定機器等の備品費が未使用になったこと、さらには研究計画変更による対象者の人数が減少したことによるその他の使用が減少したこと加えて研究データ分析のための人件費等が未使用であったことなどがその理由である。
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