2023 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の意思決定能力判定指標の開発ならびに意思決定支援アルゴリズムの構築
Project/Area Number |
18K10543
|
Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
山田 紀代美 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (60269636)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 裕香 名古屋市立大学, 看護学部, 助教 (40808870) [Withdrawn]
原沢 優子 名古屋市立大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (70303774)
小出 由美 大和大学, 保健医療学部, 講師 (00840563)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 高齢者 / 意思 / 気づき / 汲み取る |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、認知症高齢者の意思を把握するために、介護老人福祉施設に勤務する介護福祉士資格のある介護スタッフに対して、高齢者のどのような表情や言動を意思とみなしているのか、またそれらの表情や言動にはどのような意味や意思が含まれているのかを把握することを目的に実施した。 対象は、介護福祉士の資格をもち、介護老人福祉施設において5年以上の介護経験がある者とした。インタビューは、介護福祉士の属性や介護経験等に関する情報を収集したののち、インタビューガイドに沿って、高齢者の表情や言動のどのようなところから高齢者の意思を把握しているのか、その場合の意思とはどのようなものであると判断したり捉えているのかを生活のあらゆる場面から具体例として上げてもらった。語りの内容は、ボイスレコーダーに録音をした。結果は以下の通りであった。 研究協力が得られた介護スタッフは、男性2名、女性4名の6名、平均年齢は44.8歳、平均介護経験は18年であった。インタビュー時間は平均57分であった。介護スタッフが高齢者の意思として把握した表情や言動は、「排泄」に関することが最も語られた。高齢者が、「椅子から腰を持ち上げようししている」「歩き始めている」「スタッフを目で探している」「体のどこかを動かしている」など、落ち着いて過ごしている状態とは明らかに異なる行動を取っている時には、最優先で「トイレに行きたいのか」と考え、トイレの介助をすると答えた者が多かった。続いて多かったのは、「場所への違和感」であった。認知症を発症してから入所する高齢者がほとんどであることから、自宅とは異なることを理解し、自分の部屋、家を探すような行動をとったり、「ここはどこですか」「家に帰りたい」などの発言が見られていた。この場合には、そばで体に触れながら昔の話などをして落ち着かせるなどの対応がなされれていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は企画段階から6年経過し、医療・介護を取り巻く状況も変化してきている。特に研究の採択後にコロナウィルスの感染拡大により、介護施設における研究はほぼ実施できなくなり、昨年からやっと再開したところである。その間にもACPや高齢者のエンドオブライフケアに対する類似研究の成果やそれらに関する高齢者の考え方も変化し、研究者自身の価値観も変化ていることから、研究の方向性を模索しているところである。しかし、これまで実施した二つの研究を通して現在方向性がある程度定まってきたことから、今年度新たな研究計画を立案し実施予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの5類移行により、介護施設における高齢者を対象とした研究が可能になってきたことから、昨年度より現地での調査を開始した。しかし、研究の方向性として高齢者自身の意思の表出を高齢者の表情や言葉から確認しようと試みたが、重度の認知症高齢者の場合、体調や環境の状況により表出そのものがなくなったり、表出された言動も変動することが確認されたため、表出されたそのものだけに注目し判断してもよいのかという疑問が生じてきた。さらに、自立した成人であれば、意思を実現する行動を自分自身で実行が可能である。しかし、要介護や認知症の高齢者の場合には、自分自身の意思を他者に伝え介助により、また代理人に依存してそれをかなえることになる。意思の実現のために他者が介在するということは、そこでコミュニケーションが行われる。コミュニケーションとは意思の伝達であることから、受け手の受け取り方も大きく影響する。以上から、今年度は、高齢者自身の表出のみならず、受け手であり意思の代理実行者でもある介護者が高齢者の意思をどのように捉えているのかを把握する研究を実施した。本年度はその相互関係を明らかにすることで、高齢者の意思を把握し、それを実現する過程を明らかにする計画である。
|
Causes of Carryover |
2019年度末から世界的に流行した新型コロナウィルスの感染により高齢者施設においての研究の実施は2022年度の約3年間ほど停止してしまった。さらに、感染状況が収束に向かう時期に研究者が定年を迎え所属が異動になるということも重なり、研究が約3年近く停滞してしまった。しかし、2022年度の末より新しい所属大学の関連施設である介護施設の協力を得て研究が再スタートしたところである。そこで、研究を再開し、当事者である高齢者の意思表示とそれをくみ取る介護スタッフの両者の研究を実施した。それらを元に今年度は全国調査を行い、認知症高齢者の意思の把握とその実行状況について明らかにしたいと考えている。
|