2020 Fiscal Year Research-status Report
介護支援専門員の多職種連携における「協働的能力」に関する調査研究
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18K10551
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Research Institution | 湘南医療大学 |
Principal Investigator |
小林 紀明 湘南医療大学, 保健医療学部看護学科, 教授 (10433666)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多職種連携 / 協働的能力 / 介護支援専門員 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の超高齢社会は、2025年問題や認知症高齢者増加など、地域全体で支援を必要とする高齢者をどのように支えるかが重要な課題となっている。こうした現状の中、地域連携を強化・推進していく中心的な役割を担わなければならない介護支援専門員には、地域包括ケアシステムの中で、医療職をはじめとする多職種と連携・協働しながら、利用者の尊厳を旨とした自立支援に資するケアマネジメント能力を実践できる専門職が求められている。 Hugh Barr(1998)は、多職種連携能力として3つのコア・コンピテンシー【他の専門職と区別できる専門職能力】【全ての専門職が必要とする共通能力】【他の専門職種と協働するために必要な協働的能力】を提唱し、日本版として春田淳志ら(2016)がその中の1つである「協働的能力(Collaborative)」に焦点を当て協働的能力としての多職種連携コンピテンシーモデルを開発している。春田らのモデルは、2つのコア・ドメイン:「① 患者・利用者・家族・コミュニティ中心」「② 職種間コミュニケーション」と、4つのドメイン:「③ 職種としての役割を全うする」、「④ 自職種を省みる」、「⑤ 他職種を理解する」、「⑥ 関係性に働きかける」の、合計6つの要素から形成されている。しかし、「協働的能力」を構成する6つの要素の妥当性や各要素の下位概念までは明らかにされていない。そこで、本研究の第1段階として、介護支援専門員の「協働的能力」を高める要素を抽出するため半構造化面接法によるインタビュー調査を実施・分析した。その結果、春田のモデルが示す既存の6つの要素に加えて、「連携を高めるための自己研鑽」「ケアマネジャー間連携・能力向上」「積極的な言動」「多職種のやる気を引き出し役割を与える」「専門性の尊重」「受容・調整する」の6つの新たな要素が抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年4月から母親の遠距離介護を行っていたことと、2020年12月に腰椎圧迫骨折で介護度が上がり、介護にかかる時間が増加した。2021年2月に入院し手術を行っている。また、2020年の2月ころから、介護環境が整ってきたので調査を進める準備を始めたが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて研究が滞り、対象が所属する施設も、コロナ対応で過剰な勤務を強いられていたことから、受け入れば難しいくなってしまい、まったく調査を進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、トライアンギュレーションの研究デザインを用い、3段階の調査1~3によって構成する。調査1は、前述に示した結果の通りで実施済みである。調査2は、全国の居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターのCMを対象に、調査1の結果から「協働的能力」を測定するオリジナルの39項目を作成し、それを基に自記式質問紙調査を実施する。その後、調査3では、利用者またはその家族を対象とした質的研究から「利用者が認識する有効なサービスに関連する協働的能力」を抽出する。 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、調査開始が大幅に遅れているが、自身の所属機関に提出した調査2の倫理審査結果を待って、5月には、全国の居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターに勤務するCM(約3,500名)を対象として自記式質問紙調査の実施を予定している。そのデータを因子分析し、協働的能力の因子構造と先行研究の「協働的能力としての多職種連携コンピテンシーモデル」の構造を比較検討する。その後調査3として、医療または介護保険による複数のサービスを利用しながら在宅で療養生活を営んでいる利用者またはその家族を対象に、半構造化面接法によるインタビュー調査を実施し、利用者またはその家族が認識するよりよいサービスの現状とその構造を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2020年度の実施予定だった、調査2:「地域包括支援センターに勤務するケアマネジャーを対象に行ったインタビュー調査」の結果から抽出した、CMのケアマネジメント能力における多職種連携に必要な12項目の「協働的能力」を基に作成した調査票を用いた全国調査(調査2)、及び、医療保険または介護保険による複数のサービスを利用しながら在宅で療養生活を営んでいる利用者またはその家族(10名)を対象に、半構造化面接法によるインタビュー調査(調査3)が、遠距離介護と新型コロナ感染拡大の影響で実施できなかったことから、これらの経費を次年度に使用するため。 使用計画としては、前述の調査2、調査3を今年度内に順次実施する。
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