2021 Fiscal Year Research-status Report
認知症カフェにおける家族介護者の介護力獲得支援モデルの開発
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18K10584
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
檪 直美 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (80331883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾形 由起子 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (10382425)
田中 美加 北里大学, 看護学部, 教授 (70412765)
江上 史子 福岡県立大学, 看護学部, 助教 (80336841)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知症 / 高齢者 / 家族介護者 / 介護力 / 認知症ケアマップ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の目的は、専門職が地域住民とともに継続的支援として専門的知識のみならず常に専門職も生活者の立つ場となり家族介護者の悩みや相談に寄り添い、介護の肯定的側面に働きかけつつ専門機関につなげていく仕組みづくりを行うことであった。しかし前年度のアンケート調査でも新型コロナウイルス感染拡大が続く中で多くの地域活動が中止され引き籠る高齢者が急増していたため、専門職との接点や支援を受ける機会が極端に減少していた。さらに高齢者はICTを駆使した交流方法の受け入れが困難であることも明らかとなっていたため、今年度は活動の場に出向く支援方法ではなく、1.高齢者と家族介護者を個別訪問し対話をすることで、介護予防や認知症の早期発見につなげること、2.認知症ケアマップを含めた認知症ケアパスを作成しT市全住民へ配布し認知症の方とその家族への支援について広く周知するという計画に修正した。まず1の個別訪問による介入はGIS(地理情報システム)を用いて予め地域の要介護度と家族構成などの情報より要介護者の多い地区を選定し、地域事情に詳しい社会福祉協議会との協働で、同意を得られた高齢者とその家族5組を訪問し、40分~1時間の対話を1か月に1回6カ月継続的に行い、終了後に同意を得られた5名の家族介護者に半構成インタビューガイドを用いてインタビューを実施した。逐語録を作成し、コード化した後にカテゴライズした。【他者と関わることでの安心感】【孤独との戦い】【新しい出会いと仲間づくり】の3つのカテゴリーが抽出された。次に取り組んだ認知症ケアパスではコロナ禍においても閉じこもり一人で悩みや不安を軽減するため、高齢者率40%を超えるT市の地域住民を対象に医療・福祉の多職種協働で作成した。認知症ケアマップを盛り込んだことにより、身近な相談窓口や相談方法、様々な支援について記載し全地域住民を対象に3月配布が終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
まず遅れていると判断した理由として、今年度も新型コロナウイルス感染拡大のため多くの活動が中止や延期となったためである。しかし閉じこもりの高齢者の認知症の進行も懸念され感染対策を講じつつ認知症カフェを再開する兆しもでてきた。そのため認知症の早期発見の重要性や家族介護者の支援について多職種協働で認知症ケアパスを作成し、これを用いて広く周知を図った。対面で支援することがこれまで重要視されてきたが、オンラインや電話相談窓口を開設し、様々な方法で家族介護者の支援が可能であることも明らかとなった。また並行して人材育成プログラムに参加した地域住民を中心に家族介護者の個別訪問を行うことで、感染リスクを低減し認知症高齢者とその家族の状況も把握することができた。訪問時には認知症ケアパスを手渡し、支援についての詳細な説明も行っていった。他者とのかかわりを持つことで、認知症高齢者も家族介護者も心身への良い影響をもたらしたと考えるが、まだ効果の検証を得ることができていない。ただこれまでの認知症カフェで行う支援プログラムから専門職連携で育成した地域住民を活用した個別訪問支援についての必要性と課題が明らかとなった。この課題を早期に改善し仕組みを構築することが重要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は前年度に予定していた認知症カフェの再開が遅れることとなり、そのタイミングで認知症ケアパスの作成と個別訪問の実施につながった。またGISを駆使することで認知症ケアマップの作成にもつなげることができたため、今後はこの認知症ケアパスを活用して、相談窓口の活用や専門職による個別訪問を行う仕組みを早急に構築することが必要である。また人材育成プログラムの継続により、より多くの地域住民の育成も必要となる。そのための研修会では正しい感染対策への知識や認知症高齢者の理解、コミュニケーション法などさらに内容を厳選して充実した研修プログラムを作成していく予定である。すでに2023年4月より研修会を3か所で開始している。しかし新型コロナウイルスの感染への不安から参加人数が伸び悩んでいる状況である。安心・安全な方法での研修会開催の方法を現在検討中である。2023年度はGISを用いた支援の必要性の高い地域への個別訪問と、認知症ケアパスの普及を図り、家族介護者の心身の状態の把握と状況改善について効果の検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
理由は、2021年度の旅費および人件費・謝金等、その他の直接経費613,880円が2022年度へ繰り越しとなった。繰越金となった理由として人件費・謝金では新型コロナウイルス感染拡大のため活動支援が中止となったこと、及び認知症ケアパス作成においては地域包括支援センター及び社会福祉協議会との協働により人件費、印刷費は生じなかった。また関係学術機関での発表はすべてがWeb開催となったために参加費のみで旅費交通費が生じなかった。使用計画としては、2021年度の繰越金は2022年度の人件費・謝金に約20万円、旅費に約10万円、その他に約31万円計上する。内訳として、人材育成プログラムのための研修会講師への謝金、人件費として計上する。旅費には個別訪問の交通費、関連学術機関での発表とインタビューのための交通費として計上する。その他については論文掲載費、報告書の印刷費・郵送費に計上し、2022年度の直接経費を予定通り執行する計画である。
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