2018 Fiscal Year Research-status Report
体表温度日内リズム評価に着目した高齢施設入所者の日内リズムの実態と関連要因の検討
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18K10638
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丹 智絵子 神戸大学, 保健学研究科, 保健学研究員 (60588490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩谷 英之 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (00294231)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 体表温度 / 日内リズム評価 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
体表温度測定による高齢者の生理的日内リズム評価のパイロットスタディとして、若年健常者26名(男性7名、女性19名、平均年齢21.9±0.95歳)と壮年健常者29名(男性6名、女性23名、平均年齢45.0±6.37歳)を対象として24時間自由行動下の体表温度を測定し、得られたDPG(末梢-中枢皮膚温の勾配(DPG; Distal-Proximal skin temperature Gradient))データについて周期回帰曲線を求め、中間値・振幅・位相時間を算出したのちに、F検定によりリズムの有意性を検討し、年代間でこれらの日内変動に差異があるかどうかを検討した。 (結果)F検定の結果、いずれの曲線も有意なリズムを持っていた。DPGの中間値は若年者群が有意に高値を示した。振幅は、若年者群において有意に低値を示した。位相時間においては、両群間に有意差は認められなかった。 DPGの中間値が若年者において有意に高値であったことは、若年者と壮年者の中枢皮膚温度の差を反映したものであると推測する。壮年者においては加齢により熱産生が弱まり中枢皮膚温度が低くなり、末梢皮膚温度も十分に上昇しなかったと思われる。したがって老年者では、壮年者よりも末梢皮膚温度とDPGの中間値が低くなることが予想される。 振幅において若年者群が有意に低値を示したのは、日中の行動の違いと年齢による末梢血管拡張能の差が原因であると考えられる。壮年者は日中デスクワークで座っていることが多く、末梢血管の収縮により末梢皮膚温度が下がる傾向にあった。また、若年者の末梢血管拡張能が壮年者に比べて高いために末梢皮膚温度が高くなり、DPGの振幅が小さくなったと推察される。 位相時間は、若年者と壮年者の比較において両群で差がなかったが、老年者においては睡眠覚醒リズムの乱れや、社会的役割の減少等に伴って位相時間の変調が認められる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若年者と壮年者の比較結果から、加齢によりDPGの中間値が低下することが示唆された。このことから、加齢により生理的な日内リズムに変調が認められるという当初から想定していた結果が得られたものと考える。また、DPGは活動量の差異に注意する必要があるものの日内リズム評価に適しており、今後老年者との比較を行うにあたり、各パラメーターについて重要な基礎的データが得られている。 現在、通所リハビリテーションに通所中の高齢者に対するデータ収集が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
通所リハビリテーションデイケアに通所中の65歳以上の利用者30名を対象に、24時間、身体活動量計(ライフ顕微鏡)による活動、睡眠の測定と、iButtonを用いて体表皮膚温度測定を行い、詳細な検討を行う。iButtonを用いた体表温度測定から得られたDPGデータは、最小二乗法を用いてコサイン曲線へ回帰した曲線を求め、中間値・振幅・位相時間を算出したのちに、F検定を用いたzero-amplitude testによりリズムの有意性を検討し、DPG日内変化をリズムとして客観的に評価する。この調査により若年者、壮年者、高齢者のデータが揃うため、加齢による生理的変化を明らかにする。また、日内リズムを正常に維持している高齢者とそうでない高齢者がいる場合、その差異は何によるものであるのかを検討するために、高齢者の日内リズムの変調に関連する要因を明らかにする。なお、若年者と壮年者によるパイロットスタディからDPGの日内変動は日中の活動の影響を受けることが示唆されたため、日中の活動量をできる限り統一できるよう十分に考慮し調査を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、パイロットスタディの分析のみであったため、アクチウォッチおよびライフ顕微鏡の購入費が予定より安く抑えられた。平成31年度は研究実施施設を増やす計画もあり、不足分のアクチウォッチおよびライフ顕微鏡の追加購入を予定している。
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