2018 Fiscal Year Research-status Report
踵腓靱帯は腓骨筋腱のテンショナーとして機能し得るか?
Project/Area Number |
18K10676
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
倉岡 晃夫 佐賀大学, 医学部, 教授 (30253412)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 踵腓靱帯 / 足部外側靱帯群 / 臨床解剖学 / 機能解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
足部外側靱帯群の1つである踵腓靱帯は、長・短腓骨筋腱の深層を横切って走行する。この解剖学的な位置関係から、足関節の運動に伴なって緊張した踵腓靭帯が腓骨筋腱を体表面方向にリフトアップすることで、腓骨筋の収縮を補助するテンショナーとして機能する可能性が推測される。本研究の目的は、踵腓靭帯がテンショナーとしての機能を有するのか否かについて機能解剖学的に解明することであり、足関節・足部の不安定性を有する患者のリハビリテーションへの臨床応用につながることが期待される。 今年度は20体の解剖実習体を用いて、標本の作製ならびに最適な計測条件に関する種々の検討を実施している。前者に関しては、腓骨筋腱と踵腓靭帯以外の足部の肢位を変化させる障害となる腱や前距腓靭帯や後距腓靭帯等を予め切断して可動性を確保した上で、腓骨筋腱を腓骨筋腱溝より取り外し、踵腓靭帯を丁寧に剖出して、その付着部位、走行角度、長さ、幅等のパラメータを記録した。その後、腓骨筋腱を元の位置に整復し、膝関節で下腿を離断し計測標本とした。後者に関しては、まず腓骨筋腱の表面をスキャンする際に必要な標本固定用の治具について検討を行い、簡易な自作治具で回転式のスキャンテーブル上に直立した状態で標本を固定できることを見出した。さらに腓骨筋腱上に設置するマーカーの材質、形状、サイズ、および標本とスキャナーとの距離、スキャン時間・範囲等について検討を行い、足関節の運動時における踵腓靱帯の挙動を計測するための最適な条件設定につき、基礎データを得ることができた。 なお、踵腓靱帯の形態的パラメータを計測する過程で、左右差に関する形態的バリエーションの性差について新しい知見が得られたので、国際学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において最も困難が予想される点は、計測に係る条件設定である。この1年間検討を重ねた結果、足関節の運動に伴う踵腓靱帯の挙動について計測の準備が整った状況となっており、また標本も一定数確保できているため、”(2)おおむね順調に伸展している”とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度はさらに20体の解剖実習体から標本を作成し、年度当初に導入した高性能デジタイザーを用いて、足部の肢位を変化させつつ腓骨筋腱および周辺の骨表面を設定した条件でスキャンし、マーカーの位置座標の変化をパーソナルコンピュータに記録後、3次元解析ソフトを用いてリフトアップの有無につきデータ解析を実施する。平成32年度は研究成果の総括ならびに論文作成を行う予定であり、年度ごとに取りまとめた研究成果は随時学会発表していく。
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Causes of Carryover |
初年度に新型のスキャナおよび解析ソフト一式(約200万円)の購入を計画しており、諸機種を検討していたところ、より安価で高性能な製品が年度末に発売されるとの情報を得たため、購入時期がずれ込んで2019年4月となった。そのため次年度使用額が生じている。この使用計画としては、スキャナおよび解析ソフト一式に160万円、国際学会発表旅費として20万円、その他の物品費や研究補助の謝金等として30万円を予定している。
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